慢性腰痛患者におけるストレス対処能力に関連する因子についての検討

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抄録

<p>【はじめに、目的】Low Back Pain Guidelineによると腰痛を慢性化させる因子は、①膝以遠の症状②心理的脅迫・うつ③恐怖回避信条・回復に対する期待が少ない④疼痛強度が高い⑤受け身であると報告している。これらの要素は疼痛を慢性化させる恐怖-回避モデル(fear-avoidance model:FAM)として説明できる。近年、FAMにおける慢性疼痛の改善には、特にストレス対処能力(sence of coherence:SOC)が重要だと云われている。SOC能力の高さは疼痛に対してうまく対処ができ、不安を感じずに回復に向かうことができることを意味する。SOCの向上は慢性腰痛症に対する治療の一助となり得るかもしれないが、介入効果を示した報告は我々が知る限りない。本研究の目的は介入の糸口を見出すための第一報として、SOCに関連する因子を同定することとした。</p><p>【方法】対象は3か月以上の腰痛または腰下肢痛を訴えた36名(年齢58.3±16.8歳、男性18名、女性18名)。除外基準は急性腰痛症、外傷(事故等)、精神疾患を有する者とした。</p><p> 評価項目は年齢、性別、疼痛強度(numerical rating scale:NRS)、膝下症状の有無とした。自己記入式質問表は、ストレス対処能力(sence of coherence:SOC)、腰痛特異的QOL尺度(roland-morris disability questionnaire:RDQ)、恐怖回避信条(fear-avoidance beliefs questionnaire:FABQ-J)、痛みによる日常生活動作への影響(pain disability assessment scale:PDAS)、不安・抑うつ評価[hospital anxiety and depression scale:HADS(下位尺度:不安・抑うつ)]、腰痛における心理社会学的評価(Keele StarT Back test:StarT Back)を使用した。</p><p> 統計解析はSOCに対して、その他の評価項目がどの程度影響するかを知るために、一般化線形モデルの多重ロジスティック回帰分析を適用させた。変数の選択は尤度比検定による変数増加法を用いた。従属変数はSOCとして、カットオフ値である59点を基準にSOC≧59を“1”、SOC<59を“0”のダミー変数に設定した。</p><p>Sample sizeはAltomanの報告に準じ、n≧10×独立変数の数を採用した。統計的解析にはR Commander2.8.1を使用した。</p><p>【結果】SOC得点の高低に影響する変数は、不安と年齢であった(モデルχ²検定でp<0.01)。不安のオッズ比は1.88(95%信頼区間:1.23~2.88)年齢のオッズ比は1.10(95%信頼区間:1.02~1.18)であった。変数の有意性は不安と年齢でともにp<0.01であった。このモデルのHosmer-Lemeshow testの結果は、p=0.15で適合していることが示された。</p><p>本研究のSample sizeは、Altomanの報告に準じ、独立変数が“ 2 ”であったためn=20必要であった。</p><p>【結論(考察も含む)】SOCと関連する項目は不安と年齢であった。疼痛やRDQ、FABQ-Jなどの腰痛に関する項目は関連が見られなかった。若く、不安を強く感じるクライアントはストレス対処能力が低い傾向であった。不安に対する特異的介入はSOCスコアを上昇させ慢性腰痛症を回復へと導くものとなるかもしれない。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】対象者への説明は、研究責任者または共同実施者が口頭で行った。研究の目的、内容、被験者になることによって生じる不利益、被験者になる事をいつでも拒否する事が出来る旨を説明し同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-202_2-H2-202_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713087982848
  • NII論文ID
    130007693742
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-202_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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