術後6ヶ月の大腿骨近位部骨折患者の骨密度変化率と身体機能・骨代謝マーカーの関連

DOI
  • 梅原 拓也
    済生会呉病院 リハビリテーション室 広島大学大学院医歯薬保健学研究科
  • 橋本 彩歌
    済生会呉病院 リハビリテーション室
  • 桑原 大輔
    済生会呉病院 リハビリテーション室
  • 水野 尚之
    済生会呉病院 整形外科
  • 木藤 伸宏
    広島国際大学 総合リハビリテーション学部 総合リハビリテーション学科
  • 梯 正之
    広島大学大学院医歯薬保健学研究科

抄録

<p>【はじめに】</p><p>近年,大腿骨近位部骨折患者は増加しており,その中で対側の骨折すなわち両側大腿骨近位部骨折患者を経験することも珍しくない.その理由としては,骨密度の改善や身体運動機能の回復が十分に得られず,結果として再骨折や移動を主とする活動制限を加速させている可能性がある.これまでに,大腿骨近位部骨折患者術後の骨密度変化と身体機能の関連を検討した報告は,我々が知る限りない.よって,本研究の目的は,術後6ヶ月の大腿骨近位部骨折患者の骨密度変化と身体機能・骨代謝マーカーとの関連を明らかにすることである.</p><p>【方法】</p><p>本研究のデザインは,後ろ向き研究とした.本研究の対象者は,2017年1月から2018年3月の間に大腿骨近位部骨折術後6ヶ月になった者とした.取込基準は,当院整形外科に来院しリハビリテーションを受けた者とした.除外基準は,両側大腿骨近位部骨折の者,日常的に歩行をしていない者,これまでに中枢神経疾患などにより明らかな運動障害がある者と欠損値がある者とした.測定項目は,年齢,性別,Body Mass Index(以下,BMI),受傷側,骨折型,術式,骨密度(Bone Mineral Density:BMD),骨代謝マーカー(Total P1NP,ビタミンD,TRACP-5b),骨粗鬆症治療薬の種類,30秒椅子立ち上がりテスト(chair stand 30:CS30),股関節外転筋力,片脚立位の可否,疼痛(Short-Form McGil Pain Questionnaire 2),歩行能力(独歩、杖、伝い歩き、歩行車、歩行器、押し車)とした.全ての変数は,カルテより抽出した.統計解析として,大腿骨近位部の骨密度変化率%「(術後6ヶ月時BMD-入院時BMD)/入院時BMD×100」を求め従属変数として,重回帰分析(ステップワイズ法)を行った.多重共線性を考慮して,Variance Inflation Factor値を算出し,10以上となる変数がある場合には独立変数から除去した.有意水準は5%とした.</p><p>【結果】</p><p>2017年1月から2018年3月の間に取込基準に合致した対象者は,19名であった.除外患者は,対側大腿骨近位部骨折の者が2名,日常的に歩行をしていないものが1名であった.最終的に本研究の対象者は,16名(年齢:82.4±10.3,男女比:87.5:12.5)であった.変数間で相関関係を検討した結果を考慮して,最終的な独立変数は,年齢,性別,受傷足,術式,骨代謝マーカー(Total P1NP,ビタミンD,TRACP-5b),CS30,股関節外転筋力,片脚立位の可否,疼痛,歩行能力であった.重回帰分析の結果,Total P1NP ,CS30,片脚立位の可否が抽出された.各独立変数の関与の大きさを表す標準偏回帰係数は,Total P1NP で-0.357,CS30で0.762,片脚立位の可否で0.668であった.回帰式の寄与率を表す自由度調整済み決定係数(R2)は,0.746であった.</p><p>【結論】</p><p>身体機能としては,CS30と片脚立位の可否が骨密度変化に影響していた.術後にCS30や片脚立位を可能とするまで身体機能を向上させることで骨密度の上昇に繋ることが示唆された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は,済生会呉病院倫理委員会の承認を得て実施している(承認番号:126).</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-17_2-H2-17_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713088726528
  • NII論文ID
    130007693744
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-17_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ