腸脛靭帯摩擦症候群を疑った変形性膝関節症患者

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タイトル別名
  • -膝外側部痛に対するプレーティングアプローチによる介入の一症例-

抄録

<p>【背景およびプロフィール】</p><p> 腸脛靭帯摩擦症候群はランニングの足部接地後、膝関節屈曲30°弱で大腿骨外側上顆と腸脛靭帯(Iliotibial Band以下ITB)の後方で摩擦が生じることにより発症する。疼痛部位としては、膝外側部、大腿骨外側上顆付近が挙げられる1)。今回、腸脛靭帯摩擦症候群を疑った患者に対し、評価とクリニカルリーズニングを経てプレーティングアプローチを行い結果が良好であった症例について報告する。</p><p> 対象は77歳女性。2、3年前より左膝痛、1年前より右膝痛出現、4、5日前より両膝外側部痛出現し、徐々に増悪したため当院を受診した。疼痛改善を治療ゴールと設定し、週3回の外来通院治療を開始した。</p><p>【評価とクリニカルリーズニング】</p><p> 今回訴えの強い右下肢に着目して考察する。画像所見から両膝関節内側に骨棘形成が認められたが、関節裂隙の狭小化はわずかであった(kellgren-lawrence 分類Ⅰと推測)。問診からred flagを疑わせる所見は認められなかった。疼痛部位は膝外側部、ITB付着部付近であり、痛みの質は鋭い痛み、程度はNumerical Rating Scale(以下NRS)8であった。疼痛誘発動作に関しては、階段昇降や立ち上がり等、膝関節屈伸にて疼痛みられ、また、車の乗り降りの際、足をあげる動作でも疼痛が認められた。軽減要因は安静、お風呂等での温熱であった。姿勢評価では膝蓋骨外側偏位がみられた。自動運動評価では膝関節屈曲にて再現痛が得られた。他動運動評価での膝関節屈曲では疼痛は出現しなかった。関節可動域テストでは股関節伸展に制限がみられた。筋力テストではManual Muscle Testにおいて股関節伸展3+レベル、内転2レベル、膝関節伸展4レベルであった。神経ストレステストはSlump test、坐骨神経ストレステスト、大腿神経ストレステストにおいて陰性。整形外科テストではOber test陽性、触診において大腿骨外側上顆の圧痛、ITB-外側広筋、ITB-外側ハムストリングスの靱帯-筋間の滑走不全(靱帯-筋間の癒着)がみられた。また同靱帯-筋間圧迫にて再現痛が認められた。試験的治療としてプレーティングアプローチを用いてITB-外側広筋、ITB-外側ハムストリングスの靱帯-筋間のリリースを行った結果、疼痛軽減がみられ階段昇降、立ち上がり動作の円滑さが向上した。</p><p> これらの評価より大腿筋膜張筋の過緊張(腸脛靭帯摩擦症候群疑い)、あるいはITB-外側広筋、ITB-外側ハムストリングスの滑走不全が疼痛の原因になっているのではないかと推測した。上記障害の原因としては内転筋群の筋力低下による膝外側支持機構の負担増大。また、症例は外出する機会が多く、1日中歩くことも多い。従って、日常生活の活動量増加による影響も膝外側支持機構の負担増大に関与していると考えた。</p><p>【介入内容および結果】</p><p> 治療はプレーティングアプローチにてITB-外側広筋、ITB-外側ハムストリングス間のリリース、大腿筋膜張筋ストレッチング、股関節制限領域の関節可動域練習、殿筋群、内転筋群の筋力トレーニングを実施した。治療は計36回、約3ヵ月実施し、疼痛がNRS8から0と改善が認められ、階段昇降、立ち上がり時の動作改善に繋がった。</p><p>【結論】</p><p> クリニカルリーズニングを用いて導き出した大腿筋膜張筋の過緊張、ITB-外側広筋、ITB-外側ハムストリングスの滑走不全に対し、プレーティングアプローチを含む徒手理学療法は治療手段として有効な手技であると示唆された。</p><p> 文献1)Jodi Aderem* and Quinette A. Louw , Biomechanical risk factors associated with iliotibial band syndrome in runners:a systematic review, Aderem and Louw BMC Musculoskeletal Disorders, pp1-16, 2015</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>対象者に対しヘルシンキ宣言に基づき、症例報告の目的・趣旨を紙面にて十分説明し、署名による同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-208_1-H2-208_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238111647872
  • NII論文ID
    130007693763
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-208_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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