変形性膝関節症に伴う高度膝関節屈曲制限例の特徴について

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>変形性膝関節症(膝OA)は,膝関節の可動域制限を生じ,これに伴ってQuality of lifeを低下させる慢性の疾患であることは広く知られている.しかし,ほとんどの疫学的研究や臨床的研究では,脛骨大腿(TF)関節の変形の進行度に焦点が当てられており,痛みや膝蓋大腿(PF)関節を含めた関節のアライメントが,膝関節の可動域制限にどの程度影響を与えているか十分に明らかではない.本研究では,TF関節の変形進行例のうち膝関節に著しい可動域制限を生じるケースの特徴について検討したので報告する.</p><p>【方法】</p><p>対象は,当院を受診し,理学療法を処方された膝OA患者のうち,内側TF関節の関節裂隙が,外側の1/2以下であった65例を対象とした.それぞれについて膝関節屈曲可動域,BMI値を測定,膝OAの疾患特異的評価尺度であるJapanese Knee Osteoarthritis Measure(JKOM)を実施した.また,運動療法開始時直近のレントゲン画像荷重下前後像,側面像,skyline viewからFemoral-Tibial angle(FTA),内側TF関節の接触の有無,膝蓋骨のtilting angle(Tilt A),Salcus angle,Insall-Salvati比(IS比)を測定して算出した.</p><p> 統計分析は,相関行列表やクロス集計表を作成して,膝関節の屈曲制限との相関関係,測定値間の多重共線性を調べた.また,膝関節屈曲可動域120°以上未満を従属変数として,多重ロジスティック回帰分析を行い,影響の大きさを調べた.独立変数は事前に著しく相関関係の高いものや有意水準から大きくかけはなれたものは除外して変数を絞り込んだ.統計解析用ソフトDr.SPSSⅡ for windowsを用い,有意水準は5%とした.</p><p>【結果】</p><p>膝関節屈曲角度との2変量解析の結果は,BMI(r=-0.45,p=0.73),疼痛VAS(V=0.38,p=0.32),JKOM総得点(V=0.61,p<0.01),内側TF関節の接触(φ=0.33,p<0.01),FTA(r=0.215,p=0.09),Tilt A(r=0.54,p<0.01),Salcus angle(r=-0.23,p=0.07),IS比(r=-0.05,p=0.70)であった.尤度比検定量を基準とした変数増加法による多重ロジスティック回帰分析の結果,投入された変数はTilt A (偏回帰係数0.50,OR1.6,p<0.01,CI:1.2,2.2),疼痛VAS(偏回帰係数-6.9,OR0.5,p<0.05,CI:0.30,0.86),JKOM(偏回帰係数1.0,OR2.8,p<0.01,CI:1.5,5.4)モデルχ検定の結果はp<0.01で有意であった.判別的中率は88.1%であった.</p><p>【結論】</p><p>今回の結果から膝OAに伴う高度膝屈曲制限群の特徴として,膝蓋骨のTilt Aがより内側方向へ大きくなることと,JKOMの総得点が大きく疼痛が軽度であることが挙げられた.姫野らは,膝OAにおける拘縮は,骨棘形成など骨組織の変化により軟部組織の緩みがなくなり,過緊張を招くとしている.膝OA進行例では大腿骨内顆や膝蓋骨関節面の骨棘形成によってTilt Aが内側方向へ大きくなり,膝蓋骨周辺の軟部組織の過緊張と関連して屈曲制限を生じている可能性が考えられる。また,高度の変形によって不安定性が最小となったことにより、痛みの発現は小さくなる一方で、JKOM総得点で表される膝の機能障害,活動制限が膝の屈曲制限と双方向的に関連していることが確認された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本調査は,ヘルシンキ宣言に則り,個人情報保護に十分注意し行った.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-185_2-H2-185_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288157853184
  • NII論文ID
    130007693769
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-185_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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