人工股関節全置換術を施行した股関節疾患患者の身体活動の推移

DOI
  • 分藤 英樹
    大分県立病院リハビリテーション科
  • 加藤 浩
    九州看護福祉大学大学院看護福祉学研究科健康支援科学専攻

抄録

<p>【はじめに、目的】人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty:以下,THA)は術後早期の自宅退院が可能である.しかし,退院後の心身機能と身体活動の回復過程の推移に関する調査研究は少ない.そこで,我々はTHA施行患者を対象に,術前,術後1カ月(退院時),術後3カ月(外来時)における心身機能と身体活動の関連性について検討した.</p><p>【方法】対象は変形性股関節症及び特発性大腿骨頭壊死症と診断され2016~2017年に当院でTHAを施行予定の90名のうち,外来時まで評価が可能であった女性27名(年齢67.2±7.4歳,特発性大腿骨頭壊死症2名)であった.術式は後側方アプローチであり,同一医師が執刀した.術側の病期分類は進行期4名,末期23名であり,非術側は初期1名,進行期4名,末期3名,THA 10名であった.職業従事者は8名であった.除外基準は精神疾患,中枢疾患,関節リウマチと診断されている者,股関節を除く人工関節置換術施行者とした.</p><p> 測定時期は術前,退院時,外来時とし,測定項目は身体活動量・強度,NRS,ROM,筋力,TUG,10m歩行,LSA,SF-36,JHEQ,自己効力感とした.身体活動は身体活動量計ライフコーダGS(スズケン社製)を使用した.術前,外来時は自宅で1週間測定し,中央値にあたる日の歩数(歩/日),約3.6~5.2METsの中強度活動(分/日)とした.</p><p> 統計学的処理は術前,退院時,外来時の比較に多重比較検定(Tukey検定)を使用した.重回帰分析はステップワイズ法を使用し,従属変数を外来時歩数,中強度活動,独立変数を術前評価項目とした.多重共線性には十分配慮した.統計解析はSPSS23(日本IBM社製)を使用し,統計学的有意水準は5%とした.</p><p>【結果】</p><p>1.術前,退院時,外来時の比較</p><p> 術前と比較し退院時はNRS,JHEQ,自己効力感で有意な改善が認められた.術前と比較し外来時は筋力,TUG,10m歩行時間,SF-36身体・精神的側面で有意な改善が認められた.外来時身体活動は歩数約3,900歩/日,中強度活動約5分/日であった.</p><p> 2.重回帰分析</p><p> 外来時歩数に関連する因子として抽出された項目はJHEQ股関節の不満足度(β=-0.39),非術側膝関節伸展筋力(β=0.52),LSA(β=0.31)であった(R2=0.67,p<0.01).外来時中強度活動に関連する因子として抽出された項目はJHEQ(β=0.45),非術側膝関節伸展筋力(β=0.36)であった(R2=0.44,p<0.01).</p><p>【結論(考察も含む)】多重比較検定の結果から,外来時身体活動とSF-36役割社会的側面,LSAは術前と比較し有意差は認められなかった.THAによって股関節が再建されたとしても,術後3カ月では身体活動の改善及び社会参加の向上は得られていないと言える.また,重回帰分析の結果から外来時の身体活動は,特に歩数は術前非術側膝関節伸展筋力,中強度活動は術前JHEQに関連していることが示された.術前は術側股関節だけでなく,非術側の下肢筋力と患者立脚型評価であるJHEQを活用することで術後3カ月時の身体活動を予測できる.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究の内容は当院倫理審査委員会で審査を受け,承認を得た(承認番号:27-36).全ての対象者には説明文書と同意書にて十分に説明を行い,研究参加に関する同意を得て研究を実施した.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-30_2-H2-30_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288158613632
  • NII論文ID
    130007693939
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-30_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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