High tibial osteotomy術後の活動量回復に影響する因子は年齢により異なる

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抄録

<p>【はじめに、目的】 High tibial osteotomy (HTO)は主に変形性膝関節症(膝OA)患者に対し、下肢アライメントを変えることにより膝関節に生じる力学的ストレスを減少させ、膝痛の改善と活動性の向上を目的になされる手術である。近年、高齢者のみでなく若年膝OA患者へ適応が広がりつつある。このことからHTO術後早期から歩行能力を向上させ、活動量を適切に回復させることは重要である。我々は人工膝関節置換術後患者を対象に、術後活動量の回復には、痛みや膝伸展筋力などの機能的要因とともに破局的思考や痛みに対する自己効力感などの心理的要因が関与することを報告した(平川 2017)。しかしHTO術後活動量の回復に関与する要因を、年齢別に比較検討した報告はない。そこで本研究は、年齢別にHTO術後患者の術後活動量の回復を比較し、その特徴を把握すると共に、活動量に影響する要因を機能的・心理的要因から検討し、年齢を考慮した術後理学療法を考察することを目的とした。</p><p>【方法】当院にてHTO(open-wedged)を施行された患者157名(男51名)を65歳以上(高齢群:99名)、65歳未満(壮年群)に分類し、活動量、歩行時痛、術側と非術側の膝伸展・屈曲可動域(ROM)および膝伸展筋力(筋力)、痛みの破局的思考、痛みに対する自己効力感を評価した。活動量の評価は1日の総歩数を活動量計にて計測した。歩行時痛はNumerical Rating Scale (NRS)を用い、筋力の評価はHand Held Dynamometerを用いた。痛みの破局的思考はpain catastrophizing scale (PCS)、痛みに対する自己効力感はpain self-efficacy(PSE)にて評価した。評価は術後5週に行った。両群において、活動量と各評価要因間にて相関関係(Pearson)を算出し、歩数を説明変数、活動量との相関関係がp<0.20であった要因を目的変数とした重回帰分析を行った。統計学的有意水準をp<0.05とした。</p><p>【結果】歩数は高齢群3253±2206歩、壮年群4248±2189歩であった。高齢群では、相関分析より歩行時痛(r=-0.24, p=0.01)、PCS(r=0.21, p=0.03)、PSE(r=0.15, p=0.11)であり、重回帰分析の結果、歩行時痛(β=-0.22, p=0.04), PCS(β=0.29, p=0.01)が抽出された。壮年群では、相関分析より術側・非術側の屈曲ROM(術側 r=-0.26,p=0.04, 非術側r=-0.31, p=0.01)、術側筋力(r=0.23, p=0.07)、PSE(r=0.24, p=0.05)となり、重回帰分析の結果、術測の屈曲ROM(β=-0.30 P=0.04)が抽出された。</p><p>【結論】相関分析及び重回帰分析から、HTO術後5週での歩数に影響する要因として、高齢群では歩行時痛や痛みに対する心理状態を示すPCSが、壮年群ではROMや筋力といった運動機能要因が術後歩数の回復に関与することが分かった。PCSには患者教育の重要性が指摘されていることから、高齢HTO患者には、痛みの原因やその予後の説明など患者教育を充実させる必要があることがわかった。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当院倫理委員会の許可を得て実施された。(承認番号FRH2018-R-023)</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-65_2-H2-65_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288157504512
  • NII論文ID
    130007694007
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-65_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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