片脚立位バランス課題における、脊椎の加速度測定の有用性の検証

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抄録

<p>【はじめに、目的】バランス障害を定量的に評価する機器として、床反力計や三次元動作解析装置が用いられるが、機器の可搬性の問題があり使用環境が限定される。近年は小型の加速度計が普及し、使用環境や対象者の幅が広がっている。今回、閉眼片脚立位バランスを課題として、脊椎の異なる部位で測定した加速度の有用性を、従来の指標である足圧中心(Center of Pressure:COP)との関連性により検証した。</p><p>【方法】対象は、健常成人9名(男性1名、女性8名、平均年齢21.0歳、平均身長160.9cm、平均体重53.8kg)とした。利き足はボールを蹴る足と定義し、利き足での閉眼片脚立位バランス課題20秒間を2回測定し、合計18回の課題施行を解析対象とした。18回全て20秒の閉眼閉脚立位を完遂した。加速度の測定はTrigno Lab Avanti System(DELSYS)のAvantiセンサーを、第7頸椎(C7)、第7胸椎(Th7)、第5腰椎(L5)へ装着した。装着には両面テープを使用し、頸椎はテープ、胸椎および腰椎は伸張性バンドを用いて身体へ固定した。COPの測定はBP400600床反力計(AMTI)を用いた。サンプリング周波数は加速度計と床反力計ともに100Hzとした。加速度の前後、左右方向それぞれにおいて、加速度の振幅の大きさを示す実効値であるRoot mean square(RMS)を求めた。またCOPの前後と左右方向それぞれの動揺距離(軌跡長)、総軌跡長、矩形面積を求めた。各部位のRMSとCOPの関連性をみるため、Pearsonの積率相関係数を求めた。統計処理はSPSS 11.0J for windowsを用い、有意水準を5%とした。</p><p>【結果】各測定値の平均値について、各部位の前後RMSはC7で0.17、Th7で0.56、L5で0.05、左右RMSはC7で0.09、Th7で0.09、L5で0.09であった。COPの前後軌跡長は940.1㎜、左右軌跡長は855.2㎜、総軌跡長は1409.0㎜、矩形面積は2358.4cm2であった。相関係数rについて、COP前後軌跡長と前後RMSではC7で-0.25、Th7で0.01、L5で0.49であり、L5で有意な相関関係を認めた。COP左右軌跡長と左右RMSではC7で0.77、Th7で0.69、L5で-0.09であり、C7とTh7で有意な相関関係を認めた。COP総軌跡長とRMS(前後/左右)では、C7で-0.26/0.71、Th7で0.11/0.64、L5で0.53/-0.13であり、C7とTh7の左右、L5の前後で相関関係を認めた。COP矩形面積とRMS(前後/左右)では、C7で0.54/0.76、Th7で0.20/0.60、L5で0.38/0.31であり、C7の前後と左右、Th7の左右で有意な相関関係を認めた。</p><p>【考察】閉眼閉脚立位バランス課題において、動揺の前後の解析ではL5の加速度RMSとCOPが、左右の解析ではC7とTh7の加速度RMSとCOPに有意な相関関係を認めた。また、C7の前後および左右の加速度RMSは、COPの矩形面積や総軌跡長と複数の有意な相関関係を認め、バランス制御における脊椎の動きの特徴を反映していることが考えられた。</p><p>【結論】従来のCOP測定に代わる評価指標として、脊椎における加速度測定の有用性が示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言を順守した。また、高崎健康福祉大学の研究倫理審査を受審した(第2937号)。対象者には事前に研究の趣旨を説明し、書面にて同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-130_1-I-130_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288158632832
  • NII論文ID
    130007694139
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-130_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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