乳児における臥位から座位への起き上がり動作分析

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抄録

<p>【はじめに】</p><p>乳児は生後7ヶ月頃になると臥位から座位へと起き上がるようになり、それまでの従重力位から抗重力位への姿勢変換が可能になる。座位を獲得することにより、児の目線は高くなり世界が広がり、両上肢は物を操作する道具として使用することが可能となるため座位獲得の意義は大きい。運動発達段階におけるバリエーションの変化は脳の発達を反映することが示唆されているが、乳児が臥位から起き上がり、座位獲得に至る連続的運動パターンを詳細に検討されたものは少ない。本研究では、乳児の座位への起き上がり動作パターンを詳細に観察・分析することにより、座位獲得に至る姿勢運動パターンの発達の基礎的研究とすることを目的とした。</p><p>【方法】対象は座位が可能になった月齢7ヶ月〜9ヶ月の15例(平均在胎週数39.2±1.5週、平均出生時体重2869.4±561.7g)であった。対象児をマットレス上に背臥位にし、母親の呼び掛けや対象児が関心を示す玩具などで起き上がり動作を促した。動作の記録にはデジタルムービーカメラ1台を用いた。対象児によっては起き上がり動作に対する動機づけが異なると考えられるため、撮影時間に関する条件付けは行わなかった。小児理学療法の臨床経験を有する評価者1名が動画を観察し、背臥位から座位に至る連続動作を自由記述した。得られた自由記述データをテキストマイニングソフトKH Corder(ver.3.Alpha.13g)を用いて分析した。</p><p>【結果】</p><p>自由記述データ全文を対象に形態素解析をした。抽出語の合計は1412語であった。出現頻度の多い用語をみると到達姿勢である座位(29回)に続き、骨盤(25回)、四つ這い(25回)、回旋(23回)、上肢(19回)、下肢(13回)、姿勢(13回)、伸展(13回)、支持(13回)が上位であった。続いて「座位」のキーワードがどのような文脈で出現しているかを類似度計算(Jaccard係数)による共起ネットワークを用いて示したところ、背臥位から座位に至る起き上がりに関わる文脈において、「座位」というキーワードに隣接する言葉は「骨盤」、「回旋」であった。</p><p>【考察】小児理学療法の臨床経験の長い理学療法士による自由記述文をテキストマイニング手法を用いて分析し乳児の起き上がり動作に関わる用語を抽出したところ、動作に関わる用語では「骨盤」「回旋」が特徴的なキーワードであった。理学療法士にとって姿勢運動パターンの観察・分析は、その専門性が発揮できる重要な分野であるが、一方で妥当性、正確性の課題も指摘されており、学生や若年のセラピストに対する教育的側面からも伝承が困難な分野の一つである。今後、今回得られたキーワードの精査を通して、出生時体重、月齢、起き上がり動作パターンとの関係を検証し、さらに低出生体重児における座位の発達との比較検討も行っていきたいと考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は東京大学ライフサイエンス委員会での審査を得て、ヘルシンキ条約に基づき研究を実施した。対象児の家族には疲労などの負担がある場合にはいつでも中断し即座に研究への参加が中止できることを事前に説明した。代諾者(保護者)に対する説明を行い、同意書への署名をもって研究参加への同意を得た。また、同意撤回書も手渡し、同意後も研究への協力を撤回できる旨の説明を行った。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), J-75_2-J-75_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134633088
  • NII論文ID
    130007694411
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.j-75_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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