幼少期にSDR・ITBを施行した学齢期アテトーゼ型脳性麻痺児に対して姿勢変換を中心に介入し、粗大運動能力が向上した一例

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抄録

<p>【はじめに・目的】アテトーゼ型脳性麻痺児は,動揺性姿勢筋緊張や不随意運動を有し姿勢制御に困難性を有する.また,筋緊張は全身性のスパズムなどがみられる.それら筋緊張に対する治療として,選択的脊髄後根遮断術(以下:SDR)やバクロフェン髄腔内投与治療(以下:ITB)が選択されることがある.SDRやITBの単独治療後の症例に対する理学療法報告はみられるが,SDRとITBを併用している脳性麻痺児に対する理学療法報告は少ない.</p><p>今回,幼少期にSDR続いてITBを施行した学齢期アテトーゼ型脳性麻痺児に対して姿勢変換を中心に運動学習していくことで,粗大運動能力が向上した一例を経験したため報告する.</p><p>【方法】</p><p>症例:9歳男児 アテトーゼ型脳性麻痺.GMFCSレベルⅣ.在胎28週、1233gにて出生.2歳5か月時にSDRを施行,3歳時より下肢に対するボツリヌス毒素注射を施行.6歳2か月時にITBを開始.7歳1か月時より当院理学療法(以下:PT)に通院開始.</p><p>臨床像は,口頭でのコミュニケーション可能.下肢の知覚は曖昧で,筋収縮に伴う痛みの訴えが強い.音刺激や視覚変化,姿勢変換時に全身性のスパズムが目立ち,背臥位や側臥位,座位保持は困難.車椅子座位は胡座位のみ可能で,下肢を下した姿勢保持は困難.寝返り動作は不能.介助立位は,下肢が開排位となり困難.</p><p>PT介入:外来にて週1回40分の治療を24か月施行.介入から12か月は,床上での姿勢変換の中で,支持基底面となりうる部位への表在感覚,固有感覚情報を与えそれに対する感覚運動経験を促すように介入した.介入12~24か月は,座位・立位課題を通して,抗重力伸展活動を学習していくように介入した.</p><p>評価:当院PT介入当初と介入後12か月,介入後24か月で比較した.評価項目は,粗大運動能力尺度(以下:GMFM-88),姿勢・動作遂行時間・視診を用いた.</p><p>【結果】GMFM-88の変化は,総合点は2.6%から8.4%,8.6%へ向上(A項目:6%→29%→31%,B項目:7%→10%→10%,C項目:0%→2%→2%)し,ゴール総合点は6.5%から19.5%→20.5%と向上した.</p><p>姿勢・動作は,12か月後に背臥位での下肢伸展位保持が可能.背臥位から腹臥位への寝返り動作が可能となり,時折背臥位から腹臥位を経由し割座への姿勢変換が可能となった.また24か月後には,側臥位保持時間の延長(0秒→最長5分),車椅子座位では,下肢を下ろした座位が不能から20分となった.またSRC-Wを用いた立位では下肢を床方向へ下ろすことが可能となった.</p><p>【結論】今回,SDRとITBを施行したアテトーゼ脳性麻痺症例に対して,粗大運動能力向上を目的に姿勢変換などの自動運動をもとに感覚運動経験を積んでいくことで臥位・車いす座位レベルでの粗大運動能力の向上につながった.今後も継続的な支援を続け,獲得した能力を床座位や車いす座位,立位活動といった生活の中での課題につなげていけるように関わっていく.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】今回の発表に際して,倫理的配慮としてヘルシンキ宣言に基づき当事者及び保護者に船橋二和病院リハビリテーション科の規定に基づき,文書にて「報告の趣旨」と「目的」,「プライバシー保護」について説明し同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), J-77_2-J-77_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713088054400
  • NII論文ID
    130007694412
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.j-77_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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