強い過敏性と繰り返す肺炎に難渋したCostello症候群の児に対する理学療法介入経過

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抄録

<p>【はじめに】Costello症候群は特異的顔貌,心疾患,精神遅滞等を示す遺伝性疾患である. 今回,出生から1歳半までの易過敏性と繰り返す肺炎に難渋したCostello症候群の児を担当した.呼吸管理,栄養管理,合併症等で入院が長期化し,2歳5か月で退院するまでの理学療法の経過を報告する.</p><p>【症例紹介】在胎36週0日,体重3440g,Apgar score1分5点/5分8点だった.出生後より挿管され日齢13に抜管し酸素投与していたが呼吸状態が悪化し日齢41より加湿加温高流量経鼻カニューレによる呼吸管理となった.合併症として肥大型心筋症,慢性呼吸不全等を認めている. 遺伝子検査によりCostello症候群と診断された.</p><p>【経過】出生後より筋緊張亢進と易過敏性が出現し,生後2か月に理学療法開始となった.初回評価では全身の筋緊張亢進による後弓反張姿勢や,上肢の不随意運動が見られ,安静保持が困難であった.ホールディングとポジショニングで落ち着くが,体動等で容易に筋緊張が亢進する状態だった.一般病棟に転棟後,在宅療養へ向けて支援を行っていたが,生後5か月に呼吸状態が悪化し再度挿管され,その後気管切開となった.同時に無気肺を発症し呼吸理学療法を開始した.その後も肺炎と無気肺を繰り返したため継続して行った.また,ウレタンで作製した椅子やベビーカーでの座位練習,おもちゃ等での感覚刺激を行い,易過敏性の軽減や刺激の受け入れ向上を促した.両親は本児への愛着形成は良好でリハビリテーションにも協力的であったため,体位排痰や発達練習を指導し日常的に実施してもらった.生後10か月より笑顔が見られ始め,おもちゃにも反応を示すようになった.1歳半からは呼吸状態が安定し,後弓反張姿勢が消失,さらには易過敏性の軽減もみられた.それに伴い刺激に対する反応や運動発達の急激な向上がみられた.退院までは主に運動発達練習を行った.現在,日中は人工鼻での酸素投与,夜間は人工呼吸器を使用し胃瘻による栄養管理をおこなっている.筋緊張は亢進し下肢は関節可動域制限を認める.運動発達は頚定,側臥位まで寝返り可能,腹臥位での頭部挙上が可能である.認知発達は「ハイ」「バイバイ」などのやり取りが可能で,笑顔が多く社交的である.</p><p>【考察】今回,Costello症候群の中でも重症度の高い症例を経験した.易過敏性や繰り返す無気肺により理学療法に難渋したが,1歳半以降は全身状態が安定し運動面,認知面の発達が進んだ. Costello症候群は乳児期は強い人見知りや過敏等が見られるが2歳頃から緩和すると言われている.全身状態の安定とCostello症候群特有の経過により本児の発達が進んだと考える.また,家族とともに行うことで日常の関わりの中にリハビリテーションを取り入れることができ,本児の発達の変化を共有することができた.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】今回の研究はヘルシンキ宣言に則り、研究の意義について文書と口頭で両親に説明し、同意を得た上で実施した。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), J-83_1-J-83_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288157913856
  • NII論文ID
    130007694432
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.j-83_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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