海洋産ポリケチド ビセライドA・Eの全合成

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  • Total synthesis of biselides A and B

抄録

<p>ビセライド類は,当グループにおいて沖縄産ホヤより単離・構造決定されたポリケチド化合物である(Figure 1)1.類縁体として,沖縄産ホヤ,および海綿から単離されたハテルマライド類が知られている2.ビセライド類とハテルマライド類の構造的な違いとして,ビセライド類はC20位に酸素官能基を有することが挙げられる.また,ビセライドE (7)は他のビセライド類,ハテルマライド類とは異なり,ラクトンが巻き直した構造を有している.当グループでは,これら天然物の各種生物活性試験を行った結果,ビセライドA (1),B (2),およびハテルマライドNAメチルエステルは,海洋生物であるブラインシュリンプに対して毒性はほとんど示さないにもかかわらず,様々なヒトがん細胞の増殖を抗癌剤であるシスプラチンよりも低濃度で阻害することを見出した.このことから,ビセライド類,ハテルマライド類は副作用の少ない,新しいタイプの抗癌剤のリード化合物として期待されている.</p><p>当グループではビセライド類,ハテルマライド類の興味深い生物活性に着目し,これまでにハテルマライドNA (5)とB (6)の全合成を達成した3.さらに全合成経路を基盤とした構造活性相関研究を行い,これら天然物の強い細胞毒性は,マクロラクトン部分と側鎖部分の両方の組み合わせが必要であることを報告している.</p><p>今回,ビセライド類の詳細な生物活性試験の実施と構造活性相関研究を行うため,ハテルマライド類の全合成経路を基盤として,様々なビセライド類を合成できる柔軟性の高い合成経路の開発を検討し,ビセライドA (1)とE (7)の全合成を達成したので報告する.</p><p>Figure 1.Structures of biselides and haterumalides</p><p>【C20位酸素官能基の導入】</p><p> ビセライド類の合成において最も重要な点は,如何に効率良くC20位の酸素官能基を導入するかであった.ハテルマライド類の全合成の時はC20位のオレフィンメチル基を,C5–C15セグメント8を酸化したアルデヒドに対し,C20位に対応するメチル基を有するジ-o-トリルホスホノプロピオン酸エチル (9)を作用させる,Z-選択的Horner–Wadsworth–Emmons反応によって構築していた(Scheme 1)3.この手法をビセライド類に適用する場合,C20位に対応するヒドロキシメチル基を有するホスホネートは,Horner–Wadsworth–Emmons反応において,容易にb-脱離反応が進行することが予想される.</p><p>Scheme 1.Construction of Z-olefin in haterumalides</p><p> 当グループでは,これまでにC20位酸素官能基の導入について,ホスホランのa位にヨウ素を有する安定イリド12を用いたWittig反応とクロスカップリング反応を行う経路や(Scheme 2: route 1)4a,ハテルマライド類のC20位オレフィンメチル基を二酸化セレンを用いたアリル酸化反応によってC20位酸素官能基を導入する経路を報告したが(route 2)4b,いずれの合成経路とも位置/立体選択性,収率,および再現性に問題があり,効率的ではなかった.</p><p>Scheme 2. Previous work: introduction of oxygen group at C20 in biselides</p><p> そこで,酵素を用いた位置選択的加水分</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845702294186368
  • NII論文ID
    130007722882
  • DOI
    10.24496/tennenyuki.58.0_oral5
  • ISSN
    24331856
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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