回復期リハビリ病棟におけるBasic Movement Scaleを用いた端座位の自立判定

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  • ~端座位自立の可否とカットオフ値の算出~

抄録

<p>【はじめに】</p><p>当院では病棟歩行の自立判定の際,Berg Balance Scale(以下:BBS)を1つの指標としてカットオフ値49/50点を基準値として用いており,経験年数に関わらず数値に基づいた活動度の設定を行っている.しかし,活動度をベッド上臥位から端座位へ変更する際の指標はなく,ベッドサイドにおける活動性改善の判断に迷う若手スタッフが多い現状がある.そこで今回,基本動作能力の測定指標の1つであるBasic Movement Scale(以下:BMS)を使用し,端座位の自立可否が判定できるか,またその際のカットオフ値が算出出来るかを目的に検証を行うこととした.尚,BMSとは寝返りから歩行までの基本動作9項目を5段階45点満点で採点し,得点が高い程能力が高いと判断される指標である.</p><p> 【対象と方法】</p><p>平成29年8月から平成30年11月までの1年3ヶ月間に当院回復期リハビリ病棟に入院し,30秒以上の静的座位保持が不可能または指示理解困難,病棟歩行自立に該当する患者を除外した66名を対象とした.対象を評価時の活動度にて端座位自立群(以下:自立群)と端座位非自立群(以下:非自立群)に分け,性別,年齢,疾患,BMS合計得点,MMSE,Functional Ambulation Category(以下:FAC),FIM運動,FIM認知項目について,χ検定とマン・ホイットニーのU検定を用いて2群比較を行った.加えて,端座位自立の判定に影響する因子抽出を目的にロジスティック回帰分析を用いて検証した.またカットオフ値は,2群のReceiver Operating Characteristic(以下:ROC)曲線を求め,得られたROC曲線下面積(以下:AUC)にて感度と特異度の和が最も高い値を算出した.尚,統計解析にはIBM SPSS ver.24 を使用し有意確率5%とした.</p><p>【結果と考察】</p><p>自立群46名(平均年齢76.8±10.7歳,BMS合計35.8±5.4点,男17名,女29名,脳血管23名,運動22名,廃用1名),非自立群20名(平均年齢81.3±6.3歳,26.4±6.2点,男7名,女13名,脳血管11名,運動器9名)であり,性別,疾患を除く項目にて有意差を認め,自立群がより若く,評価項目全てで得点が高値であった.ロジスティック回帰分析では,BMS合計,FACが有意な変数として抽出され,BMSを端座位自立の可否を判定する指標として活用できることが伺えた.また,ROC分析にてカットオフ値の算出は31/32点で感度85%,特異度80%となった.AUCは0.87と髙値であり,95%信頼区間は0.78‐0.96(p < 0.001)となり有意であった.これにより,端座位自立判定において,経験年数に関わらず数値に基づいた根拠ある活動度の設定に繋がる可能性を示した.また,自立群46名中BMS合計31点以下は9名(23-31点)であり,BMS合計が32点以上の者に比べて何らかの安全対策を行っていた.今回,回復期リハビリ病棟を対象とし検証したが,今後は一般病棟でもBMSを指標としていけるか検討していきたい.</p><p>【結語】</p><p>算出したカットオフ値を用いてBMSを指標として端座位の自立判定を行う有用性を示した.</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>ヘルシンキ宣言の勧告に従い,対象者に対して紙面にて説明と同意を得ると共に,当院倫理委員会にて承認を得た(承認番号19‐006).</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390846609780264576
  • NII論文ID
    130007760756
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2019.0_10
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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