首下がり症候群を呈した患者に対して、腰椎・骨盤への介入を行い症状改善がみられた1例

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抄録

<p>【はじめに】今回、首下がり症候群を呈した患者に対し、頭頸部や胸椎への介入に加え腰椎・骨盤アライメント改善を目的とした介入を行い、一定の効果を得られたため報告する。</p><p>【症例紹介】70歳代女性。ADL全自立で家事全般を実施していた。通院や買い物等で外出頻度は高い。既往歴は両側キアリ骨盤骨切り術、両側人工股関節全置換術であった。明確な受傷起点なく3か月前から徐々に頭頸部挙上困難となり頸部後面に疼痛を生じた。初診にて神経疾患やその他の症状は認めなかった。</p><p>【理学療法評価】主訴は「首の後ろが突っ張って痛い」であり、両側肩甲骨上角内側にNRS 8/10の疼痛を認めた。 SF-MPQ2は65点(持続的疼痛24点、間欠的疼痛18点、神経障害性疼痛5点、感情的表現18点)、HADSは13点(不安6点、抑うつ7点)であった。姿勢アライメント評価では坐位・立位で上部胸椎後彎増強、頭部前屈・前方突出、坐位では骨盤後傾、胸腰椎移行部前彎、立位では骨盤前傾、腰椎前彎増強がみられた。触診では両側僧帽筋上部・中部線維、頭板状筋、肩甲挙筋で過緊張がみられた。関節可動域(ROM-t)は自動頸部屈曲60°、伸展15°であった。徒手筋力評価(MMT)では頭部伸展3、頸部伸展3であった。</p><p>【経過】初期評価より疼痛には情緒面の関与は低く、侵害受容性が主体であると考え介入を行った。介入頻度は40分/回、週2回の頻度であり、初期介入時(1週目)は頸部伸展筋、胸筋群のリラクセーション、頸部深層筋収縮練習(背臥位での屈曲、伸展、回旋運動)、胸椎伸展運動を実施した。初期介入において、介入後は即時的に頭頸部のアライメント改善(前屈位減少)、疼痛軽減を認めるものの持続しなかった。そのため腰椎・骨盤のアライメント改善に着目し、股関節屈筋のリラクセーション、体幹深層筋の強化を目的とした骨盤中間位保持練習を追加して行った。骨盤中間位保持練習では多裂筋の活動を促通するため、患者自身でL5棘突起を触知し、下部腰椎の動きを確認しながら練習を行った。難易度を調整するために坐位で前方に机を設置し、前腕支持の姿勢で練習を行った。また、自主練習指導も併せて行った。</p><p>【結果】初期評価後、3週(計6回)介入し、最終評価を実施した。疼痛はNRS 6/10と改善を認めた。姿勢アライメント評価では坐位・立位ともに頭部前屈位が改善し、骨盤は中間位方向への変化を認めた。触診では両側僧帽筋上部線維、肩甲挙筋で筋緊張減少を認めた。ROM-t、MMTでは変化を認めなかった。</p><p>【まとめ】 本症例は坐位、立位において腰椎・骨盤のアライメント異常から身体重心が後方へ移動し、代償姿勢により頭頸部伸展筋へのストレスが増大し、疼痛が出現していると考え介入を行った。下部腰椎の分離運動を意識した骨盤中間位保持練習により体幹深層筋の活動が促通、脊柱・骨盤のアライメントが中間位方向に修正され、頭頸部伸展筋へのストレスが減少し、症状の改善に繋がったと考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>対象者には本発表に関する説明を文書及び口頭にて行い、同意を得て実施した。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390846609780253056
  • NII論文ID
    130007760851
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2019.0_90
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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