高齢大腿切断者の義足使用と歩行能力調査について

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抄録

<p>【はじめに】高齢大腿切断者の義足歩行に関して, 加齢による運動器疾患や義足操作の問題等から, 歩行獲得まで難渋するケースが多いとされる. そのため義足を作成しても, 在宅生活ではその使用頻度が減り, 退院時より歩行能力が低下する事が予想される. 今回, 高齢大腿切断者2例に対し, 退院時と自宅退院1年後 (以下:1年後) の義足装着状況と歩行能力について調査したので報告する.【対象】対象は当院回復期病棟で義足歩行を練習し, 自宅退院した片側大腿切断者2名である. 症例1は, 交通外傷により受傷し右大腿切断術を施行された80歳代の男性で, 断端長は健側長比率38%の中断端であった. 合併症に左変形膝関節症による内反膝を呈していた. 症例2は, ショベルカーで右下腿を挟み右下腿開放骨折と診断された後, 骨髄炎を発症し, 右大腿切断術を施行された70歳代の男性で, 断端長は健側長比率29%の中断端であった. 合併症に変形性腰椎症による脊柱の後弯変形がみられた.【方法】退院後の調査は, 手塚らの在宅大腿切断者の生活実態調査を参考にアンケート形式で行った. 調査内容は, 1年後の ①断端痛の有無 ②義足装着動作能力 ③義足使用頻度 ④1日当たりの使用時間 ⑤屋内義足歩行能力および ⑥屋外義足歩行能力(歩行補助具の有無, 自立, 看視, 介助) とした. 更に歩行能力の定量的評価として, 歩行能力を評価するため, 退院時と1年後10m歩行テスト (以下:10MWT) を実施した.【結果】1年後の調査は, 両者とも断端痛はなく, 義足装着は自立し, 毎日使用していた. 退院後は両者とも週2回の通所リハビリを利用していた. 症例1の退院時歩行能力は, 両松葉杖を用いて40mの自立歩行が可能で,10MWTは19.94秒であった.1日の義足使用時間は,2時間未満で, 屋外歩行は両松葉杖を用いて自立していたものの, 屋内歩行は非切断側下肢の疼痛が強くいざりか車椅子であった. 1年後の10MWTは17.00秒と退院時より改善していた. 症例2の退院時歩行能力は, 片松葉杖を用いて40mの自立歩行が可能であった. 1日の義足使用時間は, 11時間以上で, 屋内は手すりと片松葉杖, 屋外は片松葉杖と1本杖を使用し, 自立歩行が可能であった. 10MWTは退院時が35.51秒であったのに対して, 1年後は21.38秒と改善していた.【考察】猪飼らは, 下肢切断者の義足装着率や歩行能力に, 年齢や切断レベルが影響することを報告し, 手塚らは義足使用に影響する因子として, 非切断下肢の筋力とバランスの重要性を述べている.調査した2例は,ともに義足を毎日着用し, 10MWTも退院時より改善していたが, 症例1に関しては, 非切断側疼痛の為, 義足の使用は屋外のみであった. 筋骨格系に問題のある高齢大腿切断者に対し, 入院中早期からの適切な義足作成と退院後も継続したリハビリテーションを行うことで, 生活内での義足使用に繋がり歩行能力が向上したと考えるが, 義足使用状況に関しては, 疼痛を含めた非切断側下肢機能を考慮する必要があると考える.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本発表は, 症例に対し発表の目的と内容を説明し, 同意を得たうえで当院倫理審査委員会による承認を得た(承認番号:2017-B3). また本発表に関連し開示すべきCOI関係にある企業などはない.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390002184850142208
  • NII論文ID
    130007760852
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2019.0_53
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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