踵骨骨折患者に対して足底への皮膚触覚識別課題を実施した経験

DOI

抄録

<p>【はじめに】加齢により足部の2点識別覚の低下が起こり、片脚立位保持時間が短縮するという報告や皮膚触覚識別課題を実施することで2点識別覚が鮮明化するという報告が存在する。今回、踵骨骨折による足底2点識別覚の低下に対し、足底への皮膚触覚識別課題を実施したところ、2点識別覚および歩行能力の改善を認めたため報告する。</p><p>【説明と同意】対象者には事前に口頭、書面にて十分な説明を行い、書面による同意を得た。</p><p>【症例紹介】70歳代、男性。転落により右踵骨骨折・右肋骨骨折(保存療法)、右大腿骨転子部骨折(人工骨頭置換術)、を受傷。27病日からPTB免荷式装具使用した歩行訓練開始、46病日から1/2PWB、53病日からFWB にて理学療法実施した。本介入は55病日より開始した。</p><p>【方法】皮膚触覚識別課題の効果をABA法にて検討した。 A1期(ベースライン期)、B期(介入期)、A2期を各5日間とし、各期の前後で踵部の2点識別覚、歩行速度、ストライド長を評価した。A期は1日1時間の理学療法(関節可動域練習、筋力向上練習、立位バランス練習、歩行練習)を行い、B期では触覚識別課題を40分間、立位バランス練習・歩行練習)を20分間行った。触覚刺激の方法は、直径11mm、2mmのプローブを踵部の予め位置を決めた5か所(1番から5番)に接触させ、プローブの大きさと位置(番号)を口頭にて答えさせた。</p><p>【結果】2点識別覚はA1期前32mm 、A1期後30mm、B 期後26mm、A2期後29.6mmであった。歩行速度はA1期前0.34m/s、A1期後0.41m/s、B期後0.82m/s、A2期後0.94m/sであった。ストライド長はA1期前0.31m 、A1期後0.3m、B期後0.38m、A2期後0.42mであった。</p><p>【考察】足底2点識別覚の向上により立脚時のバランス能力が改善され、歩行能力の向上につながったと推測された。骨折後の歩行能力低下を呈している症例に対し、一般的な理学療法に加え、足底の感覚に介入することで歩行能力の向上が期待できる可能性が示唆された。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390283659837494016
  • NII論文ID
    130007779581
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.38.0_p-036
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ