大腿骨転子部骨折術後に患側の力発揮を高める立ち上がり練習が歩行能力に及ぼす影響−シングルケーススタディによる検討−

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抄録

<p>【目的】大腿骨近位部骨折術後の立ち上がり動作の足圧分析では、動作発揮速度(RFD:rate of force development)や力発揮の大きさ(peak vGRF:vertical ground reaction force)が健側に偏りやすい。 患側の低下はバランス能力にも影響しており、患側下肢機能を発揮できるような練習が求められている。座面高を高くすることで患側の発揮が高まるが、その練習効果は明らかではない。本研究は、患側下肢の力発揮を高めるような立ち上がり練習が歩行速度に与える影響についてシングルケースデザインにより検討した。</p><p>【症例紹介】転倒受傷した大腿骨転子部骨折術後の81歳女性である。術後1か月で杖歩行が自立し自宅退院した。 術後2か月より、週1回外来通院での理学療法にて以下の介入を行った。症例には検討の内容を十分に説明し、同意を得て施行した。</p><p>【方法】ABABデザインとし、それぞれ3週ずつ設定した。 通常の練習(ROMex、筋力増強運動、歩行練習、階段昇降練習)に加え、A期にはリカンベント式ステップ練習、B期には患側優位での立ち上がり練習を行った。立ち上がり練習は、座面高55cmの椅子から患側下肢を後方に引いた状態から立ち上がる練習で、30回2セットとした。機能評価として、歩行速度、TUG、立ち上がり動作のRFD、peak vGRFを測定した。立ち上がり動作の測定には、足圧分析装置(zebris社)を用いた。</p><p>【結果】各時期の平均歩行速度(A1→B1→A2→B2)は、 38.6 →60.9 →59.4 →72.1m/min、TUG は 15.9→12.2→11.9→9.5secとなりB期に改善が見られた。 立ち上がり動作の患側RFDは10.8→15.9→12.0→24.5N/s/kg、peak vGRFは3.0→3.8→4.2→5.0N/kgとなりB期に改善がみられた。</p><p>【考察】術後2 ヶ月経過しても健側優位での動作パターンをとり、習慣化しやすいが、座面高や足部位置の設定を工夫した立ち上がり動作を繰り返すことで、患側下肢の力発揮を再学習し、歩行時にも影響した可能性がある。 症例を増やし検討を深めたい。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390565134814083840
  • NII論文ID
    130007779666
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.38.0_p-042
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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