バルクフィルコンポジットレジンの硬化初期における重合収縮応力の発生挙動と窩洞切断面の観察

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  • Occurrence of Polymerization Shrinkage Stress and Observation of Longitudinal Sectioned Cavities in the Initial Curing Stage of Bulk-fill Resin Composite

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抄録

<p> 目的 : 大型で深い窩洞で実施される積層充塡の処置時間延長への対応として, 深さ4mmの窩洞に一括充塡可能なバルクフィルコンポジットレジン (以下, バルクフィルレジン) が開発された. バルクフィルレジンを使用することでチェアタイムは短縮されるが, 発生する重合収縮応力 (以下, 収縮応力) は大きくなることが懸念される. そこで, バルクフィルレジンの収縮応力の経時的変動と応力発生に関連する機械的物性について検討を行った.</p><p> 材料と方法 : バルクフィルレジンとしてSDR (デンツプライシロナ, SDR), バルクベースハード (サンメディカル, BBH), ビューティフィルバルクフロー (松風, BBF) の3製品を実験試料とした. これらについて収縮応力, 曲げ強度, 弾性率, 重合収縮率および重合率の経時的変動を測定した. また, 金属窩洞および牛歯窩洞に各レジンを充塡し, 切断面をマイクロスコープで観察した.</p><p> 成績 : 収縮応力の発生挙動は, SDRとBBHは緩やかな上昇を示したが, BBFは急激な上昇を示した. 曲げ強度は, BBH, SDR, BBFの順に小さくなり, 各レジン間に有意差を認めた. 弾性率は, SDRがBBH, BBFと比較して有意に低い値を示した. 重合収縮率は, BBHがSDR, BBFと比較して有意に小さい値を示した. 重合率は, SDR, BBF, BBHの順に高かった. 金属窩洞の切断面観察において, SDRとBBHは窩壁とのギャップやレジン内の亀裂は認めなかったが, BBFは窩底隅角部のレジン内に亀裂の発生を認めた. 牛歯窩洞の切断面観察において, SDR, BBH, BBFとも窩壁とのギャップおよびレジン内の亀裂は認めなかった.</p><p> 結論 : バルクフィルレジンの収縮応力の経時的変動と機械的物性は試料間で異なっていた. SDRの弾性率とBBHの重合収縮率は有意に小さく, 収縮応力の発生は緩やかであった. 金属窩洞の切断面観察でBBFのみレジン内に亀裂発生を認めたのは, BBFはほかの2試料に比べ弾性率と重合収縮率が大きく, 曲げ強度が低いことが原因と考えられた. しかし, 牛歯の窩洞切断面観察で窩壁とのギャップおよびレジン内の亀裂は認めなかったことから, バルクフィルレジンの臨床使用時に収縮応力による窩洞への影響は少ないことが示唆された.</p>

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