頸髄不全損傷患者2症例に対する牽引を用いた起き上がり練習

書誌事項

タイトル別名
  • Sit up exercise using traction for two cases of incomplete cervical spinal cord injury

抄録

起き上がりができなかった頸髄不全損傷患者2症例に対して,牽引を用いた起き上がり練習を適応し,その効果についてシングルケースデザイン(AB法)を用いて検証した.症例1は78歳女性,C3-4頸髄損傷で入院し,51病日に椎弓形成術が施行された.症例2は87歳女性,頸椎症性脊髄症の症状増悪により入院した.手術適応がなくリハビリテーション開始となった.2症例とも,起き上がりは側臥位から肘立て位,手支持位に至る過程が全介助であった.介入では,オーバーヘッドフレームに設置した滑車とロープ,重錘を用いて側臥位にある対象者の上半身を起き上がり方向に牽引した.練習は,10kgの重錘に加え,支持側腋窩下に枕を1個挿入した状態から開始した.次いで,枕を三つ折にしたタオルに変更した.さらにタオルを除去した.以降は段階的に重錘を軽くしていった.2症例とも介入初日から起き上がりに成功した.症例1は介入7日目以降,症例2は介入2日目以降,重錘なしで両下肢を下垂した側臥位から端座位までの起き上がりが可能となった.介入中,2症例とも身体機能に著明な変化はみられなかったことから,今回の介入は起き上がり動作技術を学習させるうえで有効なものと考えられた.

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