高齢者の嗅覚の劣化について

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タイトル別名
  • Declining Sense of Smell in the Elderly—Comparative Study of Elderly and Young on the Odor Detection Threshold—
  • コウレイシャ ノ キュウカク ノ レッカ ニ ツイテ

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抄録

<p>高齢者の日常生活における危機管理能力を知ることを目的に,食べ物の劣化の指標として,酢酸,トリメチルアミン,メチルメルカプタン水溶液を選び,濃度をlog比0.5として,酢酸は10段階,トリメチルアミンは11段階,メチルメルカプタンは13段階の濃度の異なる試料を調製した.水と区別できる濃度を検知閾値とした.検知閾値の濃度から順次濃度を上げて,何のにおいかわかった濃度を認知閾値とした.各回に高齢者50名と若年者35名を対象とした.</p><p>いずれの試料についても高齢者は若年者より閾値が上昇し,においに対する感度が衰えていることがわかった.さらに高齢者および若年者について一人ひとりのデータから,検知閾値と認知閾値の差を求めた.高齢者ではその差は小さく若年者の方が大きかった.</p><p>用いたデータ解析の方法として,1.フィットを用いることによってデータの偏りを回避して,定量的な結論を得た.2.「対標本」を用いることによって,いずれの物質においてもパネルの検知閾値と認知閾値が有意に異なることをみいだした.などの特色がある.</p><p>最後に,高齢者に以前と比べてにおいを感じにくくなっていると思いますか,と聞いたところ,高齢者の76 %は自分のにおいの感度の低下を自覚していなかった.</p><p>本研究の結果,高齢者は嗅覚の閾値は若年者に比べ上昇しており,しかも,高齢者は聞き取り調査により,それを自覚していないことがわかった.劣化した食物を食べたりすることのないように高齢者にこのことを注意喚起すると同時に,周囲の人も高齢者に対し見守りや注意をする必要がある.</p>

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