嗅覚の基礎と臨床

  • 森 恵莉
    東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学教室

書誌事項

タイトル別名
  • 第120回日本耳鼻咽喉科学会総会教育セミナー 嗅覚の基礎と臨床
  • ダイ120カイ ニホン ジビ インコウ カガクカイ ソウカイ キョウイク セミナー キュウカク ノ キソ ト リンショウ

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抄録

<p> 多様なにおい分子を受容する嗅覚受容の仕組みが, 徐々に解明されてきている. 嗅覚障害の臨床研究においても, 着実に広がりと進歩を見せている. ヒトが “におい” として感知できる物質は, 濃度や組み合わせ, 温度や湿度などの環境によってもにおい方が全く異なる. 約400種類の嗅覚受容体により, におい物質の交通整理がなされ, 嗅球に情報が送られるシステムは, まだ未解明な部分も多くある.</p><p></p><p> においを感じることができなくなる嗅覚障害は, その先の豊かな生活や人生の選択肢を奪ってしまう. 嗅覚障害の主な原因疾患として慢性副鼻腔炎が挙げられるが, 感冒に伴う嗅覚障害や, 原因が特定できない特発性嗅覚障害も比較的多い. 神経変性疾患との関連も最近は注目されている. 難病指定された好酸球性副鼻腔炎は特に嗅覚障害が重度であるが, ほかの嗅覚障害に比して治療による効果が最も明瞭であり, 治療成績の向上が期待できる. 感冒に伴う嗅覚障害の多くは自然軽快する. 回復が長期に渡る場合は, 嗅覚刺激療法や漢方薬による治療効果も今後は期待されている. 原因が特定できない高度嗅覚障害については, 脳腫瘍を含めた中枢性疾患が存在していることもあり, 頭蓋内病変鑑別のため, 頭部 MRI や神経内科依頼も念頭に置くべきであると考える. また, 職業歴や趣向などから有機溶媒や化学薬品などの使用歴有無の聴取は, 重要な問診事項であると考える.</p>

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参考文献 (28)*注記

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