茨城県における学校教育を通した臓器提供数を増やすための取り組み

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タイトル別名
  • Initiatives toward increasing organ donation through school education in Ibaraki Prefecture.

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抄録

<p>茨城県における臓器提供者数は例年1-3件ほどであり, 全国平均を下回っている. 臓器提供数増加のためには, 医療システムの改革に加え, 社会への臓器提供に対する普及啓発が必要であり, 特に臓器移植に対する無関心層への啓発活動は最も重要である. 公益財団法人いばらき腎臓財団は2008年より県内の青少年に対して, 臓器移植の普及啓発を目的とした授業, 「いのちの学習会」を始めた. 対象は小中学生と高校生であり, 対象学年に合わせた内容で学習会を行っている. 「いのちの学習会」の目的は, 受講した生徒が家族や仲間と「臓器移植」について話すことで, 「死」に関する当事者性を考えてもらい, その結果として臓器提供意思表示に結び付けることである. 公益財団法人いばらき腎臓財団が行ったアンケート調査の結果, 生徒は講義後に「いのち」の大切さを感じ, 臓器提供意思に対して意欲的となることが明らかになった. また, 生徒を介した家族対話により, 臓器移植に対して無関心であった保護者にも関心を持たせることができることが示された. 過去11年に渡る活動で延べ14,000人を超える生徒に学習会を行ってきており, この学習会を通して, 生徒からの将来の臓器提供のみならず, 生徒を介した保護者への情報伝達による臓器提供啓発, その結果としての現在における臓器提供者の増加も期待されている. 茨城県は2015年のアンケート調査で, 提供意思表示率が全国に比べても高く, 2019年1月に始まった臓器提供医療システム改革と相まって, 2019年の臓器提供者数は増加した. 「いのちの学習会」は, その一役を担っている活動として今後も継続していく.</p>

収録刊行物

  • Organ Biology

    Organ Biology 27 (2), 197-206, 2020

    一般社団法人 日本臓器保存生物医学会

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