セメント質剝離の2症例に対する三次元画像診断に基づいた臨床的考察

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タイトル別名
  • Clinical Consideration of Two Patients with Cemental Tear based on Three-dimensional Diagnostic Imaging

抄録

<p> 緒言 : セメント質剝離は, セメント-象牙境またはセメント質の成長線に沿って, セメント質の一部が剝離性に破折する現象である. その結果, 局所的に急激な歯周組織の破壊が惹起され, 歯周病や根尖性歯周炎と類似する病態を呈することから, その鑑別が重要である. 今回は, セメント質剝離が発生した部位の違いにより, 異なる対応を行った2症例について, 口内法エックス線検査および歯科用コーンビームCT (CBCT) 検査を用いた画像診断の難易度および治療方針を検討し, 臨床的考察を行った.</p><p> 症例 : 症例1は71歳の男性, 上顎左側中切歯の近心側および口蓋側に深い歯周ポケットが認められた. 口内法エックス線検査およびCBCT検査により, セメント質剝離と画像診断することができたため, 歯周外科手術により明視下にて剝離したセメント質小片を除去した後, 同部のデブライドメントを行うことで, 良好な歯周ポケットの改善が認められた. 症例2は76歳の女性, 上顎右側前歯部に瘻孔が認められた. 症状は違和感のみで, 上顎右側中切歯および側切歯のプロービングデプスは2~3mm程度であった. 口内法エックス線所見より, 上顎右側中切歯の慢性化膿性根尖性歯周炎と診断し, 通法どおり感染根管処置を行ったが, 瘻孔は消失しなかった. 手術用実体顕微鏡を用いた根管内の精査では, 歯根破折などの異常は認められなかったことから, 歯根尖切除術の適用を検討する目的でCBCT検査を実施した. その結果, 骨吸収像は患歯の口蓋側から遠心側に及ぶ広範囲に進展していたが, 根尖孔との連続性が認められなかったことから, 本症例は根尖性歯周炎の可能性は低いと判断することができたが, 確定診断にはいたらなかった. 外科的歯内治療も検討したが, 患者は早期の確実な治癒を希望したことから, 抜歯および病変の摘出を行った. その結果, 抜去歯の歯根表面の口蓋側中央部にセメント質剝離の痕跡が確認されたため, 本症例はセメント質剝離に伴う炎症性病変と判断した.</p><p> 結論 : セメント質剝離に対しては, 発生部位, 剝離の様相および病変の三次元的進展の程度を把握したうえで, さまざまな方法から最適な治療方針を選択することが重要である.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390285300186230784
  • NII論文ID
    130007893555
  • DOI
    10.11471/shikahozon.63.312
  • ISSN
    21880808
    03872343
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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