法科学分野における毛髪中薬物の分析

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タイトル別名
  • Analysis of drugs in hair in the field of forensic science

抄録

<p> 毛髪中薬物の分析は、犯罪の立証を目的に法科学の分野で広く活用されている.毛髪は、他の生体試料(尿や血液)と比較して薬物の検出可能期間が長いことに加え、摂取歴の証明(摂取時期の特定など)が可能な唯一の試料として鑑定に供される.</p><p> 毛髪は、毛根(頭皮内に隠れている部位、約4 mm)の底部に在る毛母細胞から発生し、 1ヶ月に平均1.0~1.5 cmの速度で伸長する.一方、体内に摂取された薬物は、主に毛根から毛髪中へと取り込まれ、毛髪組織あるいは色素などと結合して定着し、毛髪の伸長と共に毛幹(頭皮外に露出した部位)側へと移行していくと考えられている.しかしながら、このような薬物の取り込みやその後の挙動に関しては、その詳細が十分に解明されておらず、摂取歴を厳密に証明するうえで大きな障壁となっていた.</p><p> 近年我々は、上記課題をクリアするために、従来必然となっていた毛髪複数本を用いた分析法を改善し、毛髪1本毎(単毛髪)での分析法を確立して、薬物の取り込みに関する知見を明らかにしながら、摂取歴推定の高度化に取り組んできた。分析手法として、LC-MS/MSによる分画分析、並びにMALDI-MSによる質量分析イメージングを併用し、複数本を用いた分析では実現できない単毛髪中の正確な薬物分布を観察した.それらの経時的な推移を観察することにより、薬物は、毛根中の2つの領域{領域①(毛球部)、領域②(毛根の上部)}から取り込まれることが明らかになり、領域①及び②のいずれを主経路とするかは、取り込まれる薬物の物性(高極性/低極性など)に依存することが示された.また、毛髪の色調(メラニン色素)も薬物分布に大きな影響を及ぼすことが明らかになり、摂取歴を推定する上で考慮すべき重要な要素である。</p><p> 本発表では、現在行っている分析手法と共に、ここ数年で明らかになった薬物の取り込みに関する知見や実際の鑑定事例などを紹介する。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390848647545146240
  • NII論文ID
    130007898466
  • DOI
    10.14869/toxpt.47.1.0_s11-1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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