メチル水銀による部位特異的神経障害における小胞体ストレスの寄与

DOI
  • 平岡 秀樹
    岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 薬効解析学
  • 岩脇 隆夫
    金沢医科大学 総合医学研究所 生命科学研究領域 細胞医学研究分野
  • 熊谷 嘉人
    筑波大学 医学医療系 環境生物学研究室
  • 藤村 成剛
    国立水俣病総合研究センター 基礎研究部 毒性病態研究室
  • 上原 孝
    岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 薬効解析学

書誌事項

タイトル別名
  • Contribution of endoplasmic reticulum stress to site-specific neuropathy by methylmercury

抄録

<p> 水俣病の原因物質として同定されたメチル水銀(MeHg)は神経細胞死を誘導し,特定の組織領域を傷害することが知られている.しかし,細胞死に至る詳細な分子機構については未だ統一した見解が得られていない.当研究室ではこれまでに,MeHgによる小胞体(endoplasmic reticulum : ER)ストレス惹起によってアポトーシスが誘導されることを細胞レベルで明らかにしてきた.そこで,本研究ではMeHg誘導性神経細胞死におけるERストレスの寄与について,in vivoレベルで解析するためにERストレス可視化マウスを用いて検討を行った.</p><p> ERストレス下では,小胞体膜タンパク質inositol-requiring enzyme 1 α(IRE1α)依存的なx-box binding protein 1 (XBP1) mRNAのスプライシング亢進が観察される.本反応を利用したER stress activated indicator (ERAI) 遺伝子を発現させたトランスジェニック(Tg)マウスでは,生体内ERストレス惹起を発光および蛍光シグナルにより可視化することが可能である.そこで,ERAI-TgマウスにMeHgを急性曝露(単回皮下投与)または慢性曝露(飲水投与)させたところ,脳内でERストレスシグナルが観察された.興味深いことに,シグナルが認められたのはMeHgによって傷害を受けることが報告されている体性感覚皮質の神経細胞であった.このことから,MeHg誘導性ERストレスには部位特異性および細胞特異性があることが明らかとなった.加えて,MeHgによるERストレス惹起は神経細胞死より早期に観察された.以上の結果より,MeHg誘導性神経細胞死においてERストレスが関与している可能性が示唆された.現在,生体内ERストレス惹起の選択性について詳細な解析を進めているところである.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390285697591762176
  • NII論文ID
    130007898517
  • DOI
    10.14869/toxpt.47.1.0_p-9s
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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