死が近い高齢者をケアする際の葛藤:ケアスタッフが僧侶と研究者に語ったこと

書誌事項

タイトル別名
  • Conflicts in the end-of-life care: Interviews with care staff by Buddhist priests and researchers
  • シ ガ チカイ コウレイシャ オ ケア スル サイ ノ カットウ : ケアスタッフ ガ ソウリョ ト ケンキュウシャ ニ カタッタ コト

この論文をさがす

抄録

<p>目的:個人が尊重され,満足できる終末期そして死に向けて,一層の多職種による対話と協働が求められている.本研究の目的は,死が近い人を支える現場のスタッフは,(1)倫理的葛藤はどこにあると考えているのか,(2)医療についてどのように考えているのか,(3)宗教についてどのように考えているのか,の探索である.方法:宗教者のケア現場における関与をテーマとした学際研究の一部として施行された.僧侶(主インタビュアー)と研究者(同副)が,高齢者福祉施設および医療施設(慢性病床)のスタッフ9名に対して半構造化インタビューを行った.結果:倫理的葛藤は「本人の意思を知ることの難しさ」,「家族との不協和」,「死を望む人もいる」,「生きる意味を失っている」,「スタッフも慣れていない」,「家族も慣れていない」の6主題が生成された.医療については,「連携への感謝」,「説得力のある説明」,「死を受け入れない」,「仲間の死を共有できない」,「冷たく感じられる」,「薬物治療中心である」,「本人中心ではない」,「本人の負荷が大きい」の8主題が生成された.宗教については,「救済への期待」,「病院には入りにくい」,「施設ではすでに関与している」,「宗教色は出してよい」,「望ましい宗教者像」の5主題が生成された.本人の意思や本人の絶望に関する葛藤は福祉施設・医療施設ともに見られた一方で,福祉施設での看取りの増加に対して,スタッフや家族が十分に慣れておらず葛藤していることが示唆された.医療に対しては,むしろ医療施設のスタッフが批判的であった.宗教との協力は,福祉施設では施設内で宗教者が活動している事例もあり前向きな意見が多いが,病院では困難が大きいことが示唆された.結論:超高齢社会における終末期ケアの質,死の質の向上に向けて,医療,ケアの専門家と,伝統的な宗教者の対話が有意義である.</p>

収録刊行物

被引用文献 (2)*注記

もっと見る

参考文献 (3)*注記

もっと見る

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ