砂壌土水田における土壌処理型除草剤の水稲に及ぼす形態的影響解明と適正使用に関する研究

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  • サジョウド スイデン ニ オケル ドジョウ ショリガタ ジョソウザイ ノ スイトウ ニ オヨボス ケイタイテキ エイキョウ カイメイ ト テキセイ シヨウ ニ カンスル ケンキュウ

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抄録

香川県では砂壌土水田が多く,中でも下層に礫を持つ土壌統が多く,透水性が大きいため,除草剤による薬害が発生しやすい土壌条件にある。これに加えて除草剤散布後の気象条件等が重なって実際に現場で薬害の発生がしばしば問題となっている。本研究は,除草剤の薬害が発生しやすい砂壌土水田において薬害回避面から見た適正使用法の確立を目的として,その基礎になると考えられる水稲に及ぼす形態的影響について検討したものである。主な研究成果は以下のとおりである。 1.砂壌土水田条件において,水種の土壌処理型除草剤が水稲の茎葉部および根部の生育に及ぼす影響について検討するとともに,薬害症状の観察を行った。 1)プレチラクロール,ブタクロール,メフェナセット,ベンスルフロンメチル,ナプロアニリドを供試し,水稲の生育に及ぼす影響についてピラゾレートとの比較検討を行った結果,除草剤処理によって水稲の出葉はピラゾレート区に比べて遅れたが,その程度は除草剤の種類によって異なった。またその後の回復過程も除草剤の種類によって異なった。また分げつの増加については,概して処理後1~2週間頃の抑制程度が大きく,その後は回復していくものがあったが,その過程は除草剤の種類によって異なった。この分げつ抑制は分げつ出現の遅延および分げつの生育停止によるものであり,その後の回復は高葉位の分げつの補償作用によるものであった。 2)茎葉部の薬害症状は,プレチラクロール,ブタクロールおよびメフェナセット区では,処理後に出現する葉身および葉鞘の伸長が抑制され,この程度が大きい株ではわい化症状を呈した。ベンスルフロンメチル区では,処理後に出現する葉身および葉鞘の伸長および分げつ発生がやや抑制され,細葉症状が特徴的であった。ナプロアニリド区では分げつ抑制が強く現れ,葉色も株全体が淡く経過して回復も遅く,穂数にまで影響した。ピラゾレート区では,明かな薬害症状は認められなかった。 3)以上の供試薬剤にベンスルフロンメチル・ジメピペレートおよびピラゾスルフロンエチルを加えて,根部における薬害症状について観察を行った結果,処理後に伸長する冠根数の減少,伸長抑制,ねじれや肥大等の形態異常等が認められた。それらの症状や程度は除草剤の種類によって異なり,ピラゾレート区に比べてピラゾスルフロンエチル,ベンスルフロンメチル,ナプロアニリド区では冠根数の減少や伸長抑制が強く現れ,次いでプレチラクロール区ではそれらの影響が大きく,ブタクロール,メフェナセット区では比較的軽微であった。ピラゾスルフロンエチル,ベンスルフロンメチル区では冠根先端部が細くなり,ナプロアニリド区では冠根の肥大が特徴的であった。また,ベンスルフロンメチル・ジメピペレート混合剤処理では,ベンスルフロンメチル単剤処理に比べて根に対する影響が明らかに小さくなることが認められた。 2.ベンスルフロンメチルが水稲に及ぼす形態的影響とジメピペレートの薬害軽減効果について,苗の植付深度,土壌の種類および処理薬量を変えてポット条件下で検討した。 1)ベンスルフロンメチルが水稲体に及ぼす形態的影響としては,茎葉部においては葉鞘長と葉身長の伸長抑制,葉幅の狭化および分げつ抑制等の生育抑制が観察され,根部においては処理後に発生する冠根に極端に短い伸長停止根や伸長抑制根が観察された。 2)苗の植付深度を1cm,0cm,0cm(浮根)の3種類に変えた場合,浅植とするほどベンスルフロンメチル処理による水稲への薬害が強く現れ,1cm植<0cm植<0cm植(浮根)の順で生育抑制が大となった。なお,0cm(浮根)とは土壌表面に苗を置くだけとし,根が露出した状態とした。 2)埴壌土(中国農試水田土壌),川砂混合土(埴壌土:川砂=1:1に混合)および砂壌土(香川農試水田土壌)の3種類の土壌を供試して検討した。水稲の茎葉部の生育に対する影響については,塩基置換容量(CEC)が低く,粘土含量の少ない川砂混合土と砂壌土の区では,埴壌土区に比べてベンスルフロンメチル処理による生育抑制が強く現れ,生育抑制からの回復は砂壌土区が埴壌土区,川砂混合土区に比べて遅い傾向にあった。根部の生育に対する影響についても同様であり,川砂混合土と砂壌土区の方が処理直後に出根する要素根において伸長停止根の発現および根数の減少程度が大きかった。 3)埴壌土条件において,標準薬量の300g/aと倍量の600g/aを処理した場合,高薬量区では茎葉部および根部共に生育抑制および形態的影響が強く現れ,その程度は川砂混合土300g/a区とほぼ同じであった。 4)ベンスルフロンメチルにジメピペレートを混合して処理することによって,植付深度,土壌条件および処理薬量を変えたいずれの条件においても茎葉部および根部の生育抑制程度が小さくなっており,顕著な薬害軽減効果が認められた。

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