西太平洋に於ける10年スケールの気候変動と地球温暖化について

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タイトル別名
  • Interdecadal Natural Climate Variability in the Western Pacific and its Implication in Global Warming
  • 西太平洋に於ける10年スケールの気候変動と地球温暖化について〔英文〕
  • ニシ タイヘイヨウ ニ オケル 10ネン スケール ノ キコウ ヘンドウ ト

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抄録

凌風丸(気象庁)による西太平洋の長期海洋観測データを用いて赤道域の海洋蓄熱量(水深300m以浅)を求めると、ENSOに対応する変動に加えて、1970年代以降の地球温暖化をもたらしたと見られる10年スケールの変動が顕著に見られる。赤道域の西太平洋の海面水温の気候値はもともと高いので、海洋蓄熱量に関連した海面水温の変動は僅かであっても大気の循環に大きな影響を及ぼすことができる。冬季のアリューシャン低気圧やアジア・モンスーンの変動はこうした太平洋熱帯域の海面水温の変動と密接に関連しているようである。しかし、ENSOの時間スケールと10年スケールとでは大気の風系の応答は、赤道域を除いて極めて異なっていて、西太平洋のアジア・モンスーン域ではむしろ逆転していることに注意すべきである。<br>海洋大循環モデルを用いたシミュレーションによると、赤道域の西太平洋の海洋変動は冬季のアジア・モンスーンに伴う風系に強く支配されている。特にフィリッピン沖のミンダナオ・ドームの季節的な盛衰は冷水の湧昇をもたらす冬季の北風と暖水の沈降をもたらす北東貿易風によって決まる。少なくともENSOの時間スケールでは、活発な(不活発な)夏のインド・モンスーンに続いて西太平洋で北東貿易風が強まり(弱まり)、これがフィリッピンの沖に暖水(冷水)のアノマリーを蓄積することが報告されており、西太平洋に於ける大気・海洋・陸面の正のフィードバック機構を解明することがENSOや10年スケールの短期気候変動を理解するには極めて重要であろう。

収録刊行物

  • 気象集誌. 第2輯

    気象集誌. 第2輯 70 (1B), 167-175, 1992

    公益社団法人 日本気象学会

被引用文献 (15)*注記

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参考文献 (29)*注記

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