小児顎骨骨折に関する臨床的ならびにX線学的研究

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  • Clinical and Roentgenographic Studies on Fractures of the Jaw in Children
  • ショウニ ガッコツ コッセツ ニ カンスル リンショウテキ ナラビニ Xセンガ

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抄録

小児顎骨骨折は臨床病態が成人のそれとは異なるほか, 治癒後の顎発育にも悪影響を及ぼすことがあるとされている。したがってその治療にあたっては, 小児顎骨の解剖生理学的特殊性が考慮される必要がある。このように小児の顎骨骨折に関しては, 固有かつ特殊な問題が存在するが, いまだ十分究明されていない課題も多い。そこで著者はこれら諸課題を解明する手がかりを得るため本研究を行った。<BR>研究方法は1932~'72年の41年間に東京医科歯科大学歯学部口腔外科を受診した15歳未満の顎骨骨折 (歯槽骨骨折単独例を除く) 106症例を対象に, 臨床統計的検討ならびにX線学的検索を行った。また骨折とその処置が顎発育に及ぼす影響を推定し, 今後の治療法改善の一助とするため, 下顎骨骨折20症例に遠隔調査を行った。<BR>小児顎骨骨折106例の内容は, 下顎骨骨折単独が98例と圧倒的に多く, 上顎骨骨折は少なかった。性別は男女比1.87: 1で男児にやや多く, 4~7歳で多発していた。受傷原因は交通事故が56.6%と過半数を占めたが, 4歳以下では転落事故が目立った。季節的には春夏に多発し, 冬は少なかった。<BR>X線写真分析から下顎骨骨折線の走行と正中縫合部, 歯胚の存在, 骨の柔軟性などとの関連性をうかがわせる所見が得られた。また骨折好発部位は3歳以下で正中部, 4歳以上は犬歯小臼歯部と増齢的に変化し, 顎関節突起骨折は8歳以上に発症しやすかった。<BR>整復法として, 7歳以下の骨折片の変位の大きい下顎骨体骨折例には新鮮, 陳旧にかかわらず観血的整復処置が行われたが, 顎関節突起骨折例にはすべて非観血的療法が採用された。固定法は受傷年齢, 症型に応じて多様であった。<BR>下顎骨骨折例の遠隔調査成績はおおむね良好であったが, 小数例の歯牙, 咬合などに骨折による軽度の障害が認められた。顎関節突起骨折例では, 骨折部はX線形態的にはほぼ正常像にもどり, 運動障害もほとんど認められなかったが, 2例に軽度の顔貌変形がみられた。<BR>顎関節突起骨折例の受傷時に変位した骨折片は, 調査時のX線写真によると自然矯正, 修復されていた。特に下顎頭が関節窩から逸脱した脱臼骨折例の治癒過程を追跡した結果, 逸脱した下顎頭が吸収され, 骨添加により新たに下顎頭が再形成されるという興味ある所見が観察された。

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被引用文献 (12)*注記

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