健常者および顎関節症患者における顎関節雑音に関する臨床的研究―特にX線およびVTRによる検索―

書誌事項

タイトル別名
  • Clinical Studies on Clicking of the Temporomandibular Arthrosis by the Method of X-rays and Video-Tape Recorder Comparing With Those of the Healthy
  • ケンジョウシャ オヨビ ガクカンセツショウ カンジャ ニ オケル ガクカンセツ

この論文をさがす

抄録

顎関節の機能障害を主徴とする患者は, その器質的変化の把握が困難なため, 不明の点が少なくない。顎関節の雑音は健康者にあっても雑音のみを呈して, 他の疼痛あるいは運動障害を伴わず, 苦痛として訴えないこともあり, 顎関節症患者のみならず, 健康者を含め, 広く検討することを必要とする。<BR>本研究は顎関節雑音の本態の解明, さらにはその治療に役立たせることを目的とし, 苦痛として訴えない健常群においても認められるそれらと対比しつつ, 他症状を伴う顎関節症患者の関節雑音について各種検索を行った。すなわち, 顎関節雑音の聴診ならびに触診所見, 単純X線写真による下顎頭の運動位置と雑音発生時期との関係, さらに造影X線写真から軟部組織の所見, ならびにビデオ録画装置 (以下VTRと略す) の応用による下顎切歯路軌跡の偏移との関係などを検索した。<BR>研究対象は顎関節ならびに口腔諸組織器官の異常を訴えない, 18歳から22歳に至る健康青年男女200名, 東京医科歯科大学歯学部附属病院予診科を受診した, 歯牙および口腔領域になんらかの症状を訴えて来院した, 1歳1ヵ月男児より80歳男性に至る一般歯科患者1, 050名, および第1口腔外科外来を受診した顎関節症患者232例である。<BR>顎関節雑音の発生例数 (頻度) および性別比は, 健康青年男女200名中34名 (17.0%) , 男女比1: 1.43, 一般歯科患者1, 050名中115名 (10.8%) , 男女比1: 1.45, 顎関節症患者232例中101例 (43.5%) , 男女比1: 2.4であった。<BR>顎関節雑音をその性状より可聴性, 可触性に大別し, さらにそれぞれについて弾撥性, 摩擦性に細分類し, かつ雑音の発生時期から指頭による経皮的触診およびX線写真を用いた結節下雑音, 窩内雑音に分類した。<BR>健常群の雑音性状は大多数が可触性で, 可聴性は少なく, 顎関節症患者群においては可聴性雑音が相対的に多く, 25.2%に認められた。さらに両群ともに開口期の弾撥性雑音が多い傾向にあり, 単純X線写真において, 開口期に下顎頭が結節下に位置した時に, 雑音が発生する結節下雑音の症例の多いことが認められた。<BR>造影X線写真では関節円板の肥厚および前方偏位, ならびに関節包損傷などの所見が著明なものとして認められた。<BR>VTRによる切歯路および雑音発生の同時記録所見において, 下顎切歯の開口期の軌跡は雑音発生時に患側へ偏移, 屈曲または一時停止を認めた。これらの所見と造影X線写真における円板の異常所見 (前方偏位, 肥厚など) により, 顎関節雑音の発生には円板の異常が大きく関与していると考えられる。

収録刊行物

被引用文献 (14)*注記

もっと見る

キーワード

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ