阻血性空腸炎の1治験例及び本邦報告例の検討

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タイトル別名
  • A CASE OF ISHEMIC SMALL INTESTINITIS AND COLLECTIVE REVIEW OF THE CASES REPORTED IN JAPAN
  • ソケツ ショウクウ チョウ エン ノ 1 チケンレイ オヨビ ホンポウ ホウコ

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抄録

阻血性空腸炎の術前診断で手術し救命した症例を経験したので報告する.高血圧,糖尿病にて内服薬治療中,早朝,突然の左上腹部痛と同部の腫瘤様抵抗を触知した57歳,男性に対し,上腸間膜造影を行い,腫瘤様抵抗触知部に一致した空腸辺縁動脈の欠如及びその周辺部の広範囲にわたる腸管濃染像を得た.又末梢血液像では,赤血球数522万, Hct 50.1%, 尿比重1.058と脱水所見を呈し,尿糖(++)で, 1日排泄尿糖量は9.6g/dl/日であった.阻血性空腸炎の診断で経過観察したが,自発痛強く,腹膜刺激症状を認めた為,翌日緊急手術を行った.発症後34時間経過していた.トライッ靱帯より約1m肛門側に約30cmにわたり腸壁及び腸管付着側の腸間膜漿膜下に出血を認め,その両側腸管は浮腫状であった.主病変及び浮腫強度な部位を約1m空腸切除を行い,端々吻合を行った.摘出標本では,粘膜構造はよく保たれていたが,出血性壊死所見であった.光顕的には,腸管全層に出血を認め,特に粘膜下層の拡大が著明であった.しかし腸管や腸間膜血管には器質的変化は見られなかった.以上より,降圧剤服用による低血圧発作により誘発されたAngiospasmによる空腸阻血性病変と推定した.又脱水状態は,増悪因子として作用し得たと考えた.本邦報告例は,本症例も含め17例であった.年齢は, 22歳~77歳で平均56歳,男14例,女3例であった.原因として,膠原病5例,手術後5例,他7例は不明だが,その内,高血圧症の既応を4例に認めた.切除手術をうけた症例は12例(70.5%),そのうち穿孔例は4例(23.5%)であり,保存的療法1例(5.8%),生検のみ1例(5.8%),剖検3例(17.6%)であった.不明2例を除いた15例中,生存9例(60%),死亡6例(40%)で,高い死亡率であった.

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