嘘と新世紀 : 野田秀樹『透明人間の蒸気』再演を読む

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タイトル別名
  • A Liar and the 21st Century : A Study of Noda Hideki's Tomei Ningen no Yuge in its Reproduction
  • ウソ ト シン セイキ ノダ ヒデキ トウメイ ニンゲン ノ ユゲ サイエン オ ヨム

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抄録

現代演劇の代表的作家である野田秀樹は、一九九一年初演の『透明人間の蒸気(ゆげ)』を二〇〇四年に新国立劇場で再演した。再演にあたって、野田はバブル末期の初演では強調されなかった、昭和史への視点を強調している。また、結末部の改変によって、劇作全体の意味合いを大きく転換した。初演では、透明人間になる詐欺師の主人公「透アキラ」の、〈嘘〉をつくという行為に、言葉による創造的行為を重ね合わせ、新世紀を切り開く力であるとの表明が読み取れるが、再演ではむしろ、実際に迎えた新世紀への失望とともに、盲目の少女「ヘレン・ケラ」が持つ、言葉の力を信じるという営為にかすかな希望を見出している。

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