担癌膀胱における局所免疫環境の組織学的検討

書誌事項

タイトル別名
  • HISTOLOGICAL ANALYSIS OF THE IMMUNOLOGICAL ASPECT IN BLADDER CARCINOMA TISSUES
  • タンガン ボウコウ ニ オケル キョクショ メンエキ カンキョウ ノ ソシキガクテキ ケントウ

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抄録

(目的) 多くの固型癌で癌病巣は宿主の免疫監視機構から逃れている事が報告されている.そこで今回我々は, 膀胱癌局所の免疫環境について検討した. (対象と方法) 当院にて1990~2002年に膀胱全摘除術を施行した膀胱癌症例のうち, 術前に抗癌剤やBCG (bacillus Calmette Guerin) の膀胱内注入療法を行っていない19症例を対象とした.各症例の切除膀胱標本を用い, 癌部位と非癌部位の2つの領域について, 抗CD4, CD8, CD83, TGF-beta (1) 抗体を用いて免疫染色を行った.細胞障害性T細胞 (cytotoxic-Tcell: CD8陽性細胞) , 成熟樹状細胞 (mature dendritic cell: mDC: CD83陽性細胞) , ヘルパーT細胞 (helper-T cell: CD4陽性細胞) においては染色陽性細胞数を, TGF-beta (1) (transforming growth factor-beta (1) ) においては染色分布面積を, 癌部位と非癌部位について比較検討した. (結果) CD8陽性細胞数は非癌部位に比べ癌部位に有意に少なかった.またTGF-beta (1) は非癌部位に比べ癌部位に有意に発現が多かった.CD4陽性細胞数及びCD83陽性細胞数は癌部位, 非癌部位ともに非常に少数であった. (考察) 今回の検討では, 非癌部位に比し癌部位において細胞障害性T細胞が有意に少ないこと, また免疫抑制因子であるTGF-betaの発現が多いことより, 膀胱癌局所では宿主の免疫監視よりエスケープしている可能性が考えられた.しかし, 癌部位における細胞障害性T細胞数と, 抗原提示細胞である樹状細胞数に関する検討では明らかな関係は証明できなかった.

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