イヌの大腸内でButyrivibrio fibrisolvensが増殖するためのアミノ酸源としてのイヌ糞の評価

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  • Evaluation of dog feces as the amino acid source for the growth of Butyrivibrio fibrisolvens in the large intestine of dogs

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抄録

プロバイオティクスとしてButyrivibrio fibrisolvensをイヌの腸管内に導入した場合に、本菌の増殖のためにアミノ酸源の補給が必要か否かをin vitro培養試験で調べた。B.fibrisolvensとしては、酪酸生成能の高いMDT-1株と共役リノール酸生成能の高いMDT-5株を供試し、15頭のイヌから採取した糞についてそのアミノ酸源としての有効性を評価した。糞を5倍容の水に懸濁して100℃で20分間煮沸したもの(もとの糞50g/L)をアミノ酸給源とし、エネルギー源(グルコース)が十分量(6g/L)存在する培地で両菌株を培養したところ、どちらの菌株も1.0〜1.4g/Lのトリプチケース-ペプトンをアミノ酸源とした場合と同程度に増殖した。1.4g/L以上のトリプチケース-ペプトンの時は6g/Lのグルコースではエネルギー源が増殖を制限すると考えられるので、50gの糞(湿重量)は本菌のアミノ酸源として1.0〜1.4gまたはそれ以上のトリプチケース-ペプトンと同程度の有効性があることになる。0.1N NaOHまたは水に懸濁して100℃で20分間煮沸した後、遠沈した上清をアミノ酸源として用いたところ、いずれの場合もほぼ1gのトリプチケース-ペプトンに相当すると考えられた。この結果は、希アルカリ液や水で加熱しても抽出されない部分にも本菌が利用し得るタンパクが若干含まれるものの、可溶性画分の方に利用性の高いアミノ酸源が多く含まれることを示す。また、0.1N NaOHまたは水で抽出したアミノ酸源の半分以上が6%トリクロロ酢酸で沈殿しないペプチドであった。煮沸した糞をアミノ酸源、フルクトオリゴ糖をエネルギー源とした培地にイヌの糞中混合細菌を接種し、その10%程度のMDT-1またはMDT-5株を接種して培養したところ、いずれの場合も酪酸生成が大きく増加したので、両菌株とも旺盛に増殖したと考えられる。大腸内には糞中以上の量のアミノ酸源が流下してくると考えられるので、これらの菌株が増殖に要求するアミノ酸は十分に腸管内に存在すると考えられる。つまり、飼料にフルクトオリゴ糖などのエネルギー源を添加する必要があるが、アミノ酸源の補充は不要と考えられる。

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