<論説>古典期アテナイにおける住民概念としてのアストス : 成員の閉鎖性をめぐって

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タイトル別名
  • <Articles>A Reconsideration of Astos, the Concept of Resident in Classical Athens, and the Exclusivity of the Polis
  • 古典期アテナイにおける住民概念としてのアストス--成員の閉鎖性をめぐって
  • コテンキ アテナイ ニ オケル ジュウミン ガイネン ト シテ ノ アストス セイイン ノ ヘイサセイ オ メグッテ

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抄録

従来、古典期アテナイは血筋による市民団の閉鎖性を特徴とするとされてきた。本稿はこの見解に疑問を呈し、その論拠となるペリクレスの市民権法でも用いられ、血筋に基づく血縁概念と一般に解釈されてきたアストスの用例の網羅的な再検討を通じて、ポリス・アテナイの性格について再考した。その結果、ノモスを基準とし、非市民、特にメトイコスをも包含しうる住民概念としてアストスが度々用いられたことが明らかになった。この認識は、日常での住民間の密接な共同関係を素地としつつも、ペロポネソス戦争期におけるメトイコスの役割や、戦争末期(前五世紀末) の社会混乱に起因するポリスをめぐる価値観の転換により助長された可能性がある。このように、市民団の閉鎖性がアテナイで占める位置は、従来想定されてきた程絶対的ではなかった。むしろ前五世紀末を転換点として、アテナイは「血縁共同体」から「ノモス共同体」へと変貌していったと考えられる。

収録刊行物

  • 史林

    史林 92 (5), 797-829, 2009-09-30

    史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)

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