人工飼料に対する蚕品種の適合性

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  • ジンコウ シリョウ ニ タイスル カイコ ヒンシュ ノ テキゴウセイ

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抄録

桑葉粉末を含む人工飼料によって種々の蚕品種を飼育し,稚蚕の発育経過を主体に蚕品種の適合性について1963年から1967年にわたり試験を行った.この間人工飼料は蚕糸試験場生理部で逐次改良が加えられてきたので,当初の飼育実験で認められた品種間の差異が緩和されたものも少なくないが,本実験での範囲で指摘できる主な点は次のとおりである.1)保存品種28品種について1~2齢期経過時数,1眠蚕および2眠蚕の体重を生葉育の場合を100とした指数でみると,経過は遅延し,眠蚕体重は軽くなるが,その程度は品種によって異なり,概括すると日本種系統が生葉育に近いいわゆる良好な発育を示し,支那種と欧州種系統は不良なものが多かった.この指数によって全品種の変異の状況をみると,経過時数についてはほぼ彷徨変異の分布を示し,変異係数は約11であったが,眠蚕体重の変異係数は1眠蚕が19,2眠蚕が30という異常な値を示した.また2眠蚕に至るまでの生存歩合も品種間で大きな差異がみとめられ,その良否は経過時数や眠蚕体重とほぼ平行していた(1963~1964).2)現行品種の日本種13品種(25例),支那種13品種(26例)について調査した結果,経過では生葉育より短いものはなかったが,眠蚕体重では生葉育を凌駕するものがあった.日本種と支那種を概括的に比較すると,生葉育に対し経過指数では日本種がまさり,日本種が支那種に対し1齢で25±3.78,2齢で21±5.58と小さい値を示したが,眠蚕体重の指数では日支間の品種差はほとんどみられなかった(1966).3)3,4齢期における就眠時分布の変異から発育の斉一度をみると1~2齢期の場合とは逆に支那種が日本種にまさり,また就眠蚕の歩合も高く,人工飼料育に対する適合性が3齢期さらに4齢期で品種的に転換することがわかった(1966).4)人工飼料育における雑種効果指数を眠蚕体重について生育葉におけるそれと比較すると,品種的には大体において比例していた.また1眠蚕体重では人工飼料育の方が高く,2眠蚕になると逆に生葉育の方が高かった.なほ生葉育における1齢と2齢の眠蚕体重雑種効果はほぼ近似の値であったが,人工飼料では常に1齢がまさった.しかし初秋期のような高温時に飼育した場合は逆に2齢が1齢よりも雑種効果が高い値を示した.5)原種における適合性の良否を考慮した交雑種18組み合わせについて掃立てから10日経過した後の発育ならびに斉一度の良否を比較した結果,1齢期の生葉育雑種効果指数の高い組み合わせがすぐれており,またそれらの原種は稚蚕人工飼料育の発育が良好なものであった.

収録刊行物

  • 蠶絲試驗場彙報

    蠶絲試驗場彙報 (92), 1-20, 1968-12

    つくば : 農林水産省蚕糸試験場

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