細胞接着斑/核両局在性LIMタンパク質Hic-5の細胞内機能とその生物学的意義

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  • サイボウ セッチャク ハン カク リョウ キョクザイセイ LIM タンパクシツ Hic 5 ノ サイボウ ナイ キノウ ト ソノ セイブツガクテキ イギ

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抄録

筆者らは過酸化水素、ならびにTGFβ誘導性のcDNAクローンとしてhic(Hydrogen peroxide-inducible clone)5を単離し、その産物に関する研究を行ってきた。その結果、Hic-5はパキシリン類似のLIMタンパク質であり、タンパク質相互作用ドメインであるLDやLIMを介して、主な局在場所である細胞接着斑、その他アクチン骨格上や核内で様々な因子と相互作用して、分子アダプターとして機能すること、特に接着斑では、チロシンキナーゼのFAKやチロシンフォスファターゼのPTP-PEST、構造タンパク質vinculinやtalinと相互作用し、インテグリンシグナルの制御に関与する可能性が示された。その作用の実態は、FAKに対してパキシリンと競合することや、NADPH oxidaseを接着斑にリクルートして、活性酸素種(ROS)によるPTP-PESTの活性を制御することなどであった。核では転写因子(核内レセプター、Smad3など)による転写複合体形成の促進に機能していた。その一方で、核外排出シグナル(NES)を有して細胞質と核間をシャトルし、サイクリンDやp21Cip1の局在や発現を介して、細胞増殖の足場依存性の制御に関わる。Hic-5のNESは特異的なシステイン残基の存在によりROS感受性であり、Hic-5による足場依存性の制御には、接着の喪失に伴い産生されるROSによってNES機能が修飾されることが密接に関係していた。総体として、Hic-5はROSをシグナルして細胞の接着状態と核機能を共役させる特異なアダプター"であると考えられた。(著者抄録)"

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