The Form of Remembrance in Faulkner's Late Years : Requiem for a Nun

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抄録

W・フォークナーの『尼僧への鎮魂歌』(1951)で作者は、約20年前に書いた『サンクチュアリ』(1931)のヒロイン、テンプル・ドレイクを再登場させ、彼女のその後の人生を描く。この時期フォークナーは、M・カウリーの『ポータブル・フォークナー』(1946)によってようやく一般に認められ始め、1950年にノーベル賞を受賞するが、プライバシーを重んじる作家にとって急な名声は困惑するものでもあった。『尼僧への鎮魂歌』は実験的な構成だが、散文部で町の歴史が叙事詩的に語られ、劇部ではテンプル・ドレイク・スティーヴンズの過去の罪が州知事公邸で語られるなど、聴衆を意識した語りとなっている。フォークナーはこの作品において、俯瞰的な新たな語りを試みつつ、カウリーによってダイジェスト化されたヨクナパトーファ・サーガを再び自分の創造物として語り直そうとする。この時期彼は、自分の作品がマス・メディアの時代にどのように記憶されるか、不安を感じていただろう。この論文では、テンプル再訪は『ポータブル・フォークナー』のために書いた『響きと怒り』付録に登場するキャディ・コンプソンに誘発されたという推定に立ち、『尼僧への鎮魂歌』のもう一人の登場人物セシリア・ファーマーの残した署名と関連させて、晩年近いフォークナーによる公の記憶と記念碑、個の記憶、忘却について考える。

収録刊行物

  • 人間文化研究

    人間文化研究 18 135-149, 2012-12-21

    名古屋 : 名古屋市立大学大学院人間文化研究科

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