認知症学の芽生え〜そのルーツを探る〜

  • 福井 俊哉
    昭和大学横浜市北部病院内科(神経内科担当)

書誌事項

タイトル別名
  • Emergence of academic concepts of dementia ―in search of their roots ―
  • 会長講演 認知症学の芽生え : そのルーツを探る
  • カイチョウ コウエン ニンチショウガク ノ メバエ : ソノ ルーツ オ サグル

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抄録

「老年期」の概念は,紀元前6 世紀のギリシャの内科医Pythagoras が63 歳以降の心身の機能低下について述べた頃に始まりGreco-Roman 時代まで関連した記載がある。その後一旦、科学の進歩が衰えるが、Bacon(1290)は脳部位と認知機能の関係について触れ、Pratis(1549)が「記憶障害」について述べた。Esquirol(1772-1840)は、認知症は大脳疾患であり、慢性的な知性と意志の弱化を呈すると記載した。1968 年、Blessed G がアルツハイマー病(AD)は老化現象ではなく大脳疾患であるとの見解を示し、認知症の概念が確立された。一方、本邦では認知の衰えを「老人ぼけ・もうろく」と古くから表現し、1960年代より「痴呆」との用語が使われた。本邦における「痴呆学の芽生え」は、老年痴呆にアルツハイマー病の変化が多いとする病理的研究から始まり、臨床的検討は遅れて1970年代に開始された。AD とPick 病は19 世紀から20 世紀における臨床症状の詳細な観察と、その当時発達を遂げた組織染色法に助けられて見出された。Lewy 小体は1912 年に発見されたが、Lewy 本人はそれを重視せず、レビー小体の命名はTretiakoffによる(1919年)。レビー小体型認知症の疾患概念は1976年のKosakaらの報告を待つことになった。各種疾患が歴史的な背景を共有する点が興味深い。

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