担癌状態で慢性血液透析療法に導入された患者の生命予後について

  • 原 正樹
    がん感染症センター都立駒込病院腎臓内科
  • 森戸 卓
    がん感染症センター都立駒込病院腎臓内科
  • 能木場 宏彦
    がん感染症センター都立駒込病院腎臓内科
  • 岩佐 悠子
    がん感染症センター都立駒込病院腎臓内科
  • 安藤 稔
    がん感染症センター都立駒込病院腎臓内科

書誌事項

タイトル別名
  • The mortality of cancer patients after the initiation of chronic hemodialysis therapy
  • タンガン ジョウタイ デ マンセイ ケツエキ トウセキ リョウホウ ニ ドウニュウ サレタ カンジャ ノ セイメイ ヨゴ ニ ツイテ

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抄録

【背景】近年の癌治療の進歩に伴い, 進行した担癌状態の慢性腎臓病 (CKD) 患者に対しても, 透析療法を導入し治療を継続する機会が増加してきた. しかし, こうした担癌患者の慢性透析導入後の予後についての報告は少ない. 【対象と方法】2005年1月から2013年6月までに, 当院でCKDから血液透析 (HD) に導入された担癌患者34例 (男性27例, 女性7例) を対象とした. 臨床病像とデータの経過を電子カルテ上で後方視的に調査し, 生命予後をKaplan-Meier法にて解析した. 導入後の癌治療実施の有無 (治療実施群, 治療非実施群) で患者を2群に層別し, 各々の生命予後を求めた. 年齢, 性比, 糖尿病合併率をマッチさせた非担癌HD導入患者34例の生命予後を対照とした. また, 治療実施群と治療非実施群の特徴を比較検討した. 【結果】導入時の平均年齢は70.4±8.8歳で, 11例 (32.4%) は, 導入入院時のスクリーニング検査で新規に癌が発見された患者であった. 平均ヘモグロビン濃度は8.1±1.3g/dLと対照群の9.2±1.0g/dLに比較して有意に低かった. 全患者群でHD導入後の1, 3, 5年の累積生存率は67.5%, 47.7%, 21.1% (対照群 : 100%, 83.0%, 73.8%), 治療実施群のみ, 93.3%, 68.9%, 46.0%, 治療非実施群のみ, 42.4%, 28.2%, 0%であった. 治療実施群は16例で, 消化器癌が9例 (肝細胞癌4例, 大腸癌3例, 胃癌2例) と最も多く, 次いで泌尿器癌が5例 (前立腺癌2例, 腎細胞癌1例, 尿管癌1例, 膀胱癌1例) と多かった. 【結語】HDに導入された担癌患者の生命予後は, 「導入後癌治療施行の有無」で異なる. 癌治療医, 腎臓内科医などの医療従事者が患者のHD導入に関する意思決定をサポートする上で検討すべきポイントの一つである.

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参考文献 (8)*注記

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