腹腔鏡補助下直腸低位前方切除術の手術体位により腕神経叢障害をきたした1例

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タイトル別名
  • Brachial plexus palsy after laparoscopy-assisted low anterior resection for rectal cancer:A case report
  • フククウキョウ ホジョ カ チョクチョウ テイイ ゼンポウ セツジョジュツ ノ シュジュツ タイイ ニ ヨリ ウデ シンケイソウショウガイ オ キタシタ 1レイ

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抄録

<p> 腹腔鏡補助下直腸低位前方切除術後の腕神経叢障害と推察される症例を経験した。手術体位により神経障害を引き起こしたと考えられ、その原因追及と今後の対策を検討した。患者は60歳代、男性。直腸癌及び胆石症と診断され、腹腔鏡補助下低位前方切除術および胆摘を施行した。体位は左上肢を体側に付け固定板で保持、左肩は固定器を使用した。術中頭低位は最大20度傾斜し、約4時間であった。帰室直後より左手の第1指から3指の手掌側に痺れと知覚鈍麻、左上肢屈曲時の脱力感を訴え、術後3日目まで症状が持続した。本症例の神経障害は、術中頭低位と肩固定器による腕神経叢の損傷と推察された。その原因として、肩固定器で腕神経叢が鎖骨と第一肋骨に挟まれ圧迫される事と、頭低位により、頭部の重みにより頚部がより牽引され、腕神経叢の過伸展となることが考えられた。術直後の左指の手掌側の痺れと左上肢の屈曲時の脱力感出現は、本機序により、鎖骨下部の外側神経束を通る正中神経領域に症状が出現したと考察し、今後の対策を検討した。補助具は体圧分散型マットに変更し、頚部の過伸展を避けるため、頭頂部も固定した。術前体位固定後に頭低位で受圧測定を実施した。本症例を機に、外科医、麻酔科医、看護師で良肢位を保持するための協力体制をより図れるようになった。今後も手術室での危機管理には、チーム全員で共通の問題意識を持ち続けることが重要である。</p>

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