上海・中国・日本の国際産業連関構造に関する一考察 ―2007 年日中国産産業連関表による― (今泉文子教授・元木靖教授定年退任記念号)

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  • シャンハイ ・ チュウゴク ・ ニホン ノ コクサイ サンギョウ レンカン コウゾウ ニ カンスル イチ コウサツ : 2007ネン ニッチュウ コクサン サンギョウ レンカンヒョウ ニ ヨル

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抄録

「改革・開放」後の中国の経済発展はめざましく,特に1990 年代以降現在に至るまで長期間にわたって高い経済成長率を維持し,2010 年には世界第2 のGDP大国となった.この経済発展には,日本を含む先進国からの直接投資が関わっていたことも知られている.日本企業も,特に近年では中国での生産活動が拡大し,日米間を中心とした貿易関係から日中間の貿易関係がより大きくなってきている.経済産業省の『海外事業活動基本調査』によれば,中国に進出する日本企業の半数近くは上海市に集中し,大半は東部沿海地域に集中している.本稿では,上海市が中国(上海市を除く)および日本とどのような相互依存関係にあるかを,2007 年日中国際産業連関表の枠組みを使って分析する.より具体的 には,『2007 年上海市産業連関表』と『2007 年日中国際産業連関表』を用いて,上海地域のある産業部門に1 単位の最終需要が発生した場合,その需要を満たすための上海地域の生産が直接・間接に日本経済と中国経済に与える影響を計測する.本研究は上海,中国,日本についての地域間,国際間の産業連関関係を析出するための一種の試みでもある.本研究の最も大きな特色は,すなわち『2007 年上海市産業連関表』,『2007 年中国産業連関表』および『2007 年日中国際産業連関表』に基づいて日本・中国・上海地域を網羅する産業連関表の推計を行い,地域間,国際間の相互依存関係を計測したことである.とりわけ3 地域間の相互依存関係の計測についていくつかの計測方法の比較を行い,上海地域の経済波及効果を計測するために日中の国際貿易構造だけでなく,上海市の産業・交易構造を考慮することが重要であることを示したことは先行研究に類をみないものである.本稿の第2 節で分析フレームワークについて整理し,次いで第3 節では産業連関データの準備を行った.第4 節で計測結果の検討を行ったうえで,最後の第5節で分析結果をまとめた.本研究の主な結論は次の2 点である.第1 に,上海地域の生産が中国その他地域に与える影響は日本に対する影響よりはるかに大きい.第2 に,上海地域の「民生用電子機器・通信機械」や「産業用電気機器・その他の電気機器」など,資本集約度が高い産業部門は日本への影響も大きい.一方,中国その他地域に対する生産誘発効果が大きい上海の産業部門については,「石炭製品」,「ガス」「窯業・土石製品」や「鉄鋼」などエネルギーや素原材料系の産業部門が多くみられる.したがって,日本経済に対しては上海の資本集約型産業を通じた影響が大きく,中国経済にはエネルギーや素原材料産業を通じた影響が大きい.

収録刊行物

  • 経済学季報

    経済学季報 63 (4), 73-118, 2014-03-31

    立正大学経済学会

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