噴霧乾燥による親水性,または疎水性フレーバーの包括粉末化

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  • Encapsulation of Hydrophilic and Hydrophobic Flavors by Spray Drying

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抄録

食品の香りのコントロールは,食品素材の付加価値を大きく高める技術として注目され,フレーバーの徐放制御特性などの新しい機能を付与した機能性粉末を作製する研究が行われている.食品工業において,フレーバーの包括粉末化は重要なプロセスである.本総説において,噴霧乾燥によるフレーバーの包括粉末化と噴霧乾燥粉末からのフレーバー徐放挙動についてまとめた.疎水的フレーバーは,一般的にオイルにフレーバーを溶解させたもの,またはフレーバーオイルそのものを,界面活性剤,賦形剤を溶解した溶液に添加後乳化した溶液を噴霧乾燥機で粉末化する.親水性フレーバーは,噴霧乾燥粉末内に均一に分散するため包括率は賦形剤に大きく依存する.これらのそれぞれの粉末作製における賦形剤,フレーバーのタイプについて,既往の研究をまとめた.噴霧乾燥粉末は,粉末が凝集したものや,凸凹のしわが多い粉末,粉末内部が中空や結晶が析出したものといった様々な形態の粉末がある,この粉末の形態は,粉末内機能性物質の安定性や粉末の流動性に大きく影響する.食品粉末のフレーバーの保持,徐放特性は,粉末の品質の点から非常に重要である.フレーバーの徐放に関して多くの研究が行われており,粉末からのフレーバー徐放特性が貯蔵温度における相対湿度と密接に関係していることが報告されている.乳化フレーバー噴霧乾燥粉末の緩和現象の係わる事項として,貯蔵中に賦形剤の相変化,粉末からのフレーバーの移動,酸化,賦形剤中の酸素移動,水分の移動といった諸現象の経時変化がある.フレーバー粉末の徐放性に関する研究のほとんどは,恒温恒湿環境下(静的方法)における粉末からのフレーバー徐放特性から評価されている.乳化フレーバー粉末やフレーバー包接シクロデキストリンからのフレーバー徐放挙動は,次式のアブラミの式で良好に相関できる.<br>R=exp (−(kt)n)     (1)<br>ここで,Rは粉末中のフレーバー残留率(−),kは徐放速度定数(s−1),tは時間(s),nは徐放機構定数(−)である,このアブラミ式(Weibull式)は,結晶成長を相関する速度式で多くの事象を解析するのに用いられている.異なるnの値を用いて,多くのフレーバー徐放機構に対応しフレーバー徐放挙動を相関できることから,この式は非常に有用な相関式である.フレーバー粉末が球で賦形剤中の拡散速度によりフレーバー徐放速度が決まる場合は,徐放機構定数nは0.54付近の値をとる.アブラミ式を用いて噴霧乾燥粉末からのフレーバー徐放速度定数の湿度依存性(ガラス転移温度依存性)をみた結果,ガラス転移温度Tgと徐放環境温度Tの差(T-Tg)に依存していた.

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参考文献 (124)*注記

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