在宅療養中の要介護高齢者における栄養摂取方法ならびに食形態と生命予後・入院リスクとの関連

  • 葛谷 雅文
    名古屋大学大学院医学系研究科総合医学専攻発育・加齢医学講座(地域在宅医療学・老年科学分野) 名古屋大学未来社会創造機構
  • 長谷川 潤
    名古屋大学大学院医学系研究科総合医学専攻発育・加齢医学講座(地域在宅医療学・老年科学分野)
  • 榎 裕美
    愛知淑徳大学健康医療科学部スポーツ・健康医科学科
  • 井澤 幸子
    愛知学院心身科学部健康栄養学科

書誌事項

タイトル別名
  • Routes of nutrition and types of diet among dependent community-dwelling older care recipients and the relevance to mortality and hospitalization
  • ザイタク リョウヨウ チュウ ノ ヨウカイゴコウレイシャ ニ オケル エイヨウ セッシュ ホウホウ ナラビニ ショク ケイタイ ト セイメイ ヨゴ ・ ニュウイン リスク ト ノ カンレン
  • Routes of nutrition and types of diet among dependent community-dwelling older care recipients and the relevance to mortality and hospitalization [in Japanese]

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抄録

目的:要介護認定を受け,在宅療養中の高齢者のコホートを利用し,栄養摂取方法ならびに食形態をサーベイし,その背景の比較を行うと同時に,3年間の縦断調査により,生命予後,入院への関連につき検討した.方法:名古屋市在住の高齢者を対象にした前向きコホート縦断研究(The Nagoya Longitudinal Study of Frail Elderly;NLS-FE)の参加者のうち,食事摂取状況が把握できた1,872名(平均年齢:80.6±7.7(SD)歳,男性:33.8%)を解析対象とした.研究開始時の基本的ADL,要介護度,併存症(Charlson Comorbidity Index)などの患者背景ならびに栄養摂取方法ならびに食形態を調査し,さらに3年間前向きに種々のイベントに関して縦断的調査を実施した.結果:登録時に経口摂取が可能な対象者は1,786名で,食事内容は普通食1,487名(79.5%),それ以外の経口摂取(介護食)299名(全粥食,ミキサー食など)であった.経管栄養使用者は82名(4.4%),静脈栄養は4名(0.2%)であった.介護食使用者では明らかに普通食摂取者に比較し要介護度が高く,経管栄養使用者ではさらに要介護度が高く,要介護5と認定されている対象者が84.1%にも及んだ.普通食に比較し,介護食,経管栄養利用者の順にADLは低下し,認知症,脳血管障害の有病率は増加した.3年間の観察期間に1,872名中453名(24.2%)が死亡し,798名(42.6%)が少なくとも一度の入院を経験していた.肺炎が主な死因であったのは103名(5.5%)で,肺炎により入院したのは155名(8.3%)であった.Cox比例ハザードモデルでは普通食摂取に比較し,ADLを除く調整では介護食,経管栄養使用者では死亡,入院リスクが有意に高値であったが,ADLを調整因子に加えるとその有意な関係は消失した.一方肺炎による死亡ならびに入院リスクに関してはADLを調整因子として投入しても,介護食,経管栄養使用者では有意なリスク(入院は経管栄養のみ)となっていた.結論:介護食,経管栄養利用者は肺炎死亡のリスクが高いことが明らかとなり,日ごろから適切な食事介助,口腔ケアなどの予防が重要である.

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参考文献 (7)*注記

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