子宮腺筋症の癌化と考えられた類内膜腺癌8症例の検討

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  • Endometrioid adenocarcinoma arising from uterine adenomyosis : a report of eight cases
  • シキュウセンキンショウ ノ ガンカ ト カンガエラレタ ルイ ナイマクセンガン 8 ショウレイ ノ ケントウ

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抄録

子宮腺筋症は卵巣子宮内膜症からの癌化と同様,類内膜腺癌や漿液性腺癌,明細胞腺癌などの前駆体となる可能性があり,1987年にRollyがケースレポートを報告して以来,今まで44例報告されている.しかし,その病態やメカニズムについては未知である.今回,われわれは子宮腺筋症の癌化と考えられた8症例を後方視的に検討し,臨床的特徴および診断における問題点について検討した.2005年1月から2014年9月までに大阪医科大学附属病院で施行した子宮体癌症例497例を対象とした.子宮腺筋症の癌化と診断したのは8症例(1.6%)であった.年齢の中央値は53歳であり,通常の子宮体癌症例(中央値59歳)と差異はなかった(p=0.42).主訴は8例中6例が不正出血であった.組織型は全例が類内膜腺癌であり,進行期はIA期:6例,IB期:1例,IIIc期:1例であった.筋層浸潤は1/2未満が7例,1/2以上が1例であり,全子宮体癌症例と同等(p=0.10)であった.術前内膜組織診の正診率は75%であり,2例においては分化度のup gradeを認めた.術中迅速病理診断を行った7症例における組織像の正診率は100%であった.筋層浸潤に関しては術前MRIにおける正診率は88%で1例が過大評価であった.また術中迅速病理診断を行った7症例における筋層浸潤の正診率は100%であった.8症例全例が無病生存中である(観察期間:14~92カ月).子宮腺筋症由来の子宮体癌はまれであり,今回の検討では通常の内膜癌と比較して臨床的特徴はみられなかった.腺筋症の癌化では内膜病変を認めないこともあり術前診断が困難な場合がある.また今回の8症例は筋層浸潤の有無にかかわらず全例無病生存であり予後は良かったが,今後は子宮深部に腺筋症の癌化を認めた場合に,通常の内膜癌と同等に取り扱うべきかどうかは症例を集積したうえでの検討が望まれる.〔産婦の進歩67(3):247-253,2015(平成27年8月)〕

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