乳牛に発生した骨粗鬆症

書誌事項

タイトル別名
  • Osteoporosis in lactating dairy cows

この論文をさがす

抄録

全ての搾乳牛がアルコール試験で凝固,ときには熱凝固する低酸度二等乳の集団発生がみられた。この現象は1940年代にオランダで発生した “The Utrecht abnormality of milk”と同一の現象であった。とくに若い牛はアルコール試験に強く反応し,老齢牛は熱凝固する傾向が見られた。牛乳と同時に血液を採取したところ,正常値Ca 4.28meq,Mg 2.00meq,Gl 4.23 mg/dl に対して,平均値でCa 4.14 mEq,Mg 1.74 mEqと血清Mgが低い傾向がみられた。なかでも若い牛は血清Ca 4.63 mEqが高く血清Mg 1.84 mEqが低い,老齢牛は血清Ca 3.90 mEq,血清Mg 1.68 mEq共に低く血清Gl 6.09 mg/dlが高い傾向がみられた。淘汰された乳牛の骨は骨粗鬆症(Osteoporosis)を呈し,腎臓結石がみられ腎臓髄質部分にCaの沈着がみられた。この乳牛群を追跡したところ乳熱(Hypocalcaemia),グラステタニー(Hypomagnesemia),ケトージスが発生した。この乳牛群にグラステタニーが発生したことは血清Mgが低いことと密接な関係があり,祖飼料中のMg不足に起因することが推定された。乳牛のグラステタニーは粗飼料中のMg不足であることが知られている。 動物実験ではMg欠乏食を与えると直ちに血清Mgは直ちに低下し血清Caは上昇すると報告されている。さらにMg欠乏の実験動物では腎臓の石灰化が報告されていることもよく一致する。しかし高齢牛のような血清Caと血清Mgの減少と血清Glの増加は報告されていない。これは動物実験では殆どMgを含まない飼料を投与するのに対し,乳牛では必要量よりもやや低いMgを含む粗飼料で長期間飼育し、妊娠・出産・泌乳を繰り返す為と考えられる。さらに骨粗鬆症,ケトージス,起立不能症などについては殆ど知られていない。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ