牛白血病における免疫応答

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  • ギュウ ハッケツビョウ ニ オケル メンエキ オウトウ

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抄録

牛白血病ウイルス(BLV)感染牛を病態別に比較解析した結果,ウイルス量が多い持続性リンパ球増多症(Persistent Lymphocytosis ; PL)を呈するウシは,発症リスクが高く感染源になりやすいことや垂直感染のリスクが高いことに加え,CD4+ CD25+ Foxp3+ T(Treg)細胞が増加し,Tregから産生されるTGF-βは,CD4+ T細胞のIFN-γおよびTNF-αの産生とNK細胞の細胞傷害活性を抑制し,日和見感染症への感受性を高めていることが示唆された。さらにPL牛は,BLVに対するリンパ球増殖能も顕著に低下しており,リンパ球からのIFN-γ,IL-2,IL-12などの抗ウイルスサイトカインの産生も抑制されていた。このような現象は,免疫チェックポイントに係る因子の暴走によるT細胞の免疫疲弊と呼ばれ,感染細胞や腫瘍細胞が排除されない免疫回避機序の一因であることが示されている。そこでProgrammed death 1(PD-1)およびそのリガンドであるProgrammed death ligand 1(PD-L1)の発現解析を行った。その結果,病態が進むに伴いPD-1はCD4+およびCD8+ T細胞,PD-L1はウイルス感染B細胞上で発現が亢進し,PD-L1の発現は白血球数,ウイルス力価およびプロウイルス量と有意な正の相関を示す一方,免疫抑制の指標であるIFN-γ発現量とは有意に負の相関を示した。抗ウシPD-1抗体および抗ウシPD-L1抗体を樹立し,PD-1とPD-L1との結合阻害試験を行った結果,抗ウイルス免疫の賦活効果が確認され,IFN-γの産生量の増加は,CD4+ T細胞上のPD-1発現率と正の相関を示した。これらの結果からPD-1/PD-L1経路が牛白血病の免疫抑制機序の一端であることが明らかとなった。さらに抗原特異的リンパ球に発現するLymphocyte-activation gene 3(LAG-3),T-cell immunoglobulin and mucin domain-containing protein 3(Tim-3),Cytotoxic T-lymphocyte antigen 4(CTLA-4 ; CD152)などのPD-1/PD-L1経路以外の免疫抑制受容体についても解析を進めた結果,PD-1同様に病態が進むにつれて,リンパ球上のLAG-3,Tim-3,CTLA-4およびそれらのリガンドの発現量も上昇しており,それらの結合阻害においても抗ウイルス免疫は賦活化された。

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