牛白血病ウイルスの伝播経路と地域,農場における感染対策

書誌事項

タイトル別名
  • Bovine leukemia virus infection routes and control measures in the field
  • ギュウ ハッケツビョウ ウイルス ノ デンパ ケイロ ト チイキ,ノウジョウ ニ オケル カンセン タイサク

この論文をさがす

抄録

牛白血病ウイルス(bovine leukemia virus: BLV)は届出伝染病である地方病性牛白血病(enzootic bovine leukosis: EBL)の原因ウイルスであり,国内では30-35%の牛が感染している。感染牛の多くは臨床症状を示さないが,約30%はリンパ球が恒常的に多い持続性リンパ球増多症(persistent lymphocytosis: PL)となり,約5%は感染から数年後にEBLを発症する。EBLを発症した牛は予後不良であり,と場でEBLと診断された場合は全廃棄処分となるため,農家の経済的な損失は大きい。また,これまでリンパ球の異常増加以外に臨床症状がないと考えられてきたPLにおいても,免疫抑制傾向が報告され,BLV感染症の被害が想像以上に大きいことがわかってきた。BLVは一度感染すると生涯感染が持続し,有効なワクチンもないことから,他の牛への感染を防ぎながら,感染牛を非感染牛に更新していく以外にBLV感染症による損害を防ぐ方法はない。農場におけるBLVの伝播経路は多岐に渡る。吸血昆虫の吸血,直検手袋や注射針の使い回し,母乳を介して感染する。また,感染母牛の胎盤や産道内でもウイルスは伝播する。農場にいる感染牛が等しく感染源となるわけではなく,感染ウイルス量が多い牛が主要な感染源となる。そのため,感染ウイルス量が多い牛は優先的に更新する,もしくは非感染牛と牛舎を分ける,同一牛舎での飼育の場合は距離をとることが感染拡大防止として重要である。また,感染ウイルス量が多い母牛は胎盤や産道で子牛にウイルスを伝播するリスクが高く,また母乳を介した感染リスクも高いことが予測される。このような垂直感染を防ぐには,感染ウイルス量が多い牛を繁殖に用いない,非感染母牛への受精卵移植を行うなどの対策が有効である。本稿では,BLVの感染経路とその対策を中心に概説する。

収録刊行物

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ