ウンシュウミカン‘青島温州’栽培圃場における夏期のバイオエタノール蒸留廃液の施用が土壌からの温室効果ガス発生に与える影響

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  • ウンシュウミカン'アオシマ ウンシュウ'サイバイ ホジョウ ニ オケル カキ ノ バイオエタ ノール ジョウリュウ ハイエキ ノ シヨウ ガ ドジョウ カラ ノ オンシツ コウカ ガス ハッセイ ニ アタエル エイキョウ

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抄録

ウンシュウミカン‘青島温州’の栽培圃場において、カンキツ加工廃液に由来するバイオエタノール蒸留廃液(蒸留廃液)を施用し、土壌からの温室効果ガス発生に与える影響について調査を行った。調査は2012年7月から12月にかけ、愛媛大学農学部附属農場のカンキツ園にて実施した。無施肥の対照区(C区)、蒸留廃液を施用する蒸留廃液区(DSW区)としてランダムに選んだ各3本の樹を供試した。DSW区には7月27日に全窒素で150kg N ha-1相当の蒸留廃液を10倍希釈(39L)し樹冠下に施用し、C区にも同量の水を散布した。各区3本において二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)フラックスを測定し、N2Oの排出係数も算出した。フラックス測定時には5cmの地温を測定し、また表層0-10cmの土壌含水率、pH、EC、土壌NH4 +含量、土壌NO3 -含量を測定した。また、土壌含水率と仮比重からwater filled pore space(WFPS)も求めた。CO2フラックスと土壌NH4 +含量がDSW区で施用直後に急激に上昇していたことから、蒸留廃液中の有機物の急速な分解・無機化が生じていた。DSW区とC区の積算CO2発生量の差は蒸留廃液で施用された炭素量よりも多かったが、蒸留廃液の施用により下草類の生長が促進し根呼吸が増加した可能性があり、この理由は明確ではなかった。CH4は両処理区に明確な差はなかったが、DSW区でC区よりもCH4フラックスが低い傾向があり、蒸留廃液中の有機物が土壌物理性を改善したことでCH4酸化が促進された可能性がある。N2OフラックスはDSW区で施用直後に上昇し、CO2フラックスの同様な上昇と調査地の観察から、カビ類による脱窒でN2Oが生成された可能性がある。また、蒸留廃液施用後1週間以降には両処理区で明確なフラックスの上昇が見られ、乾燥と湿潤による乾土効果で土壌の無機化が促進し、それに伴う硝化でN2Oが生成したと推測された。N2Oの排出係数は1.5%で一般的な化学肥料の値よりも高かった。しかしながら、本試験は真夏に実施されており、冬期の礼肥や基肥に用いることでN2O排出係数がより低くなる可能性があり、N2O排出を少なくするための施用時期の検討が今後必要と考えられた。

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