母体要因,出生要因,分娩様式と児の公衆衛生学的健康障害リスクとの関連についての研究: 養育医療給付児での検討

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タイトル別名
  • Analysis of correlations between factors related to delivery and risks of health impairment or disorder in neonates who received public health and medical care
  • ボタイ ヨウイン,シュッショウ ヨウイン,ブンベン ヨウシキ ト ジ ノ コウシュウ エイセイガクテキ ケンコウ ショウガイ リスク ト ノ カンレン ニ ツイテ ノ ケンキュウ : ヨウイク イリョウ キュウフジ デ ノ ケントウ

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抄録

【目的】胎児期あるいは出生直後の児に加わる要因が将来の成人病発症リスクになること(Developmental Origins of Health and Disease;以下DOHaD仮説)が議論されている.本検討ではDOHaD仮説を踏まえて母体要因・出生要因・分娩様式が低出生体重・早産・出生後の呼吸障害などの児の公衆衛生学的健康障害リスクに関連するか否かを明らかにすることを目的とする. 【方法】平成20〜24年度の群馬県山間部〜平野部の2次保健医療圏における養育医療給付児(低出生体重や出生後の疾病のため治療が行われた児に給付)を対象に(n=232),性別・母親年齢・出生順位・出生週数・出生体重・臨床的な低出生体重の重症度を基に分類した2,000 g以下児/1,201〜2,000 g児/1,200 g以下児の出生状況・帝王切開分娩の有無・双胎以上分娩の有無・出生週数から算出される予想出生体重に照らし合わせた実際の出生体重との標準偏差値(児の子宮内発育遅延を反映;以下SFD)とその絶対値・出生後の呼吸障害/黄疸/低血糖/その他の合併症あるいは症状の有無を調べ,①母親年齢・出生順位が養育医療給付に及ぼす影響の検討と,②母体要因・出生要因・分娩様式がSFD・SFD絶対値・出生後の諸症状に及ぼす影響を重回帰分析(ステップワイズ増加法)で検討した. 【結果】(1)養育医療給付率は35歳以上の高齢出産と三子以上の経産で高かった.(2)早産の関連には帝王切開分娩・高齢出産・双胎以上分娩,低出生体重には早産・双胎以上分娩・帝王切開分娩・第一子あるいは第三子・性別が算出された.(3)SFDとその絶対値の関連には低出生体重・高出生週数などが算出された.(4)呼吸障害の関連には早産・経産など,黄疸には1,200 g以下児,低血糖には低出生体重児・男児・SFDなどが算出され,各症状間の関連も認められた.(5)2,000 g以下児と1,200 g以下児及びその他の合併症/症状と他の症状に対する関連因子の一部に相反する結果が算出された.(6)母親年齢の検討から,高齢出産あるいは若年出産の関連には経産あるいは第一子が算出された.(7)出生順位の検討から,経産には高齢出産,第一子には若年出産が算出された.(8)帝王切開分娩の関連には経産・高齢出産,双胎以上分娩には帝王切開分娩が算出された. 【結論】高齢出産児,経産児は公衆衛生学的健康障害リスクを持つことが示唆されたが,それらの関連性には母体・出生要因に基づく早産や低出生体重を介した影響が推測される.出生後のSFDや各症状などと低出生体重あるいは早産とは関連性があることも示唆され,低出生体重と早産は公衆衛生学的健康障害リスクと考えられる.なお,いくつかの因子の関連性に相反する結果が算出されたが,養育医療給付児を対象としたための影響が考えられる.今後,以上の健康障害リスクとそれらの関連性を考慮した母子保健行政,妊産婦に対するDOHaD仮説を念頭においた低出生体重予防を含む施策を積極的に行う必要がある.

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