ミクログリア研究で精神分析学・精神病理学を再解釈する試み

  • 加藤 隆弘
    九州大学大学院 医学研究院 精神病態医学分野 九州大学 先端融合医療レドックスナビ研究拠点 脳研究ユニット

書誌事項

タイトル別名
  • Reinterpretation of psychoanalytic and/or psychopathological theories by microglia research
  • ミクログリア ケンキュウ デ セイシン ブンセキガク ・ セイシン ビョウリガク オ サイカイシャク スル ココロミ

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抄録

精神医学研究において,精神病理学や精神分析学を含む心の研究は,生物学的研究(脳の研究)とは対極に位置すると思われがちである。筆者は,幸か不幸か,所属している大学病院精神科医局の中で精神分析と生物学的研究という両方の世界に割と深く身を置いてきた。こうした二足の草鞋を履くという経験を元に,現在では,両者は相補的な関係にあると考えており,例えば,精神分析理論の重要概念である無意識的欲動(「生の欲動」や「死の欲動」)の起源はミクログリアをはじめとした脳内免疫細胞ではないか?とさえ考えるようになっている。筆者の研究室(九大精神科分子細胞研究グループ)では,脳と心のギャップを橋渡しするためのトランスレーショナル研究システムを試行錯誤しながら萌芽的に立ち上げてきた。本稿では,特に若手精神科医向けに,こうした研究に着手するようになるまでの一端を紹介する。筆者としては,二足の草鞋を履き続けたことによるメリットを実感しているため,生物学的精神医学を志す精神科医にも精神分析的な素養を少しでも身につけていただければと願っている。

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